私はぼんやりと悟った。

(いつか、なんて来ないんだわ)

 葛は己一人の胸に収めて、私に話すことは無いのだ。

 葛が話さないということは、良い事では無い。私の耳に入れたくないようなことだ。

(私は、どうしたら……?)

 彼から聞き出すべきか。彼が「話さない」と判断したなら、無理に聞かない方が良いのだろうか。

 葛が私を「ヒメ」と呼ぶのは、線を引いているのかもしれない。

 私との距離を、確認しているのかもしれない。

 近付き過ぎないように、離れ過ぎないように。

 彼は「ヒメ」と呼ぶ度に、予防線を張っていたのかもしれない。

 私が近付き過ぎないように、離れ過ぎないように。

 私が彼を「葛ちゃん」と呼ぶのも、実は同じ理由なのだろうか。

 私自身のことなのに、私に判らない。