私は、と口を開く。一度、口を閉じる。

 私はカップに口をつけ、また喉を湿らせる。

「兄が突然、熱を出して寝込んで。私は近付けなくて、」

 部屋の外にいた。兄は色々、言われてしまう人だけど私には優しかった。

「ハル兄がお見舞いに来た」

 彼は、真っ青な顔をしていた。彼も病人のような、やつれた顔。

「ハル兄は『ごめん』って」

 彼は、泣いているようだった。兄に謝罪の言葉を繰り返していた。

 私は口を噤む。

 陽はまたテーブルをトン、トン、と叩く。

「葛ちゃんに言っていないの。ハル兄が兄に謝罪していたって」

言っていない、と繰り返す。

「葛ちゃんはウチの兄が、葛ちゃんのお兄さんを連れて行ったと思っている」

 それは、必ずしも間違っているわけではない。そう思う。