少年はパチパチと瞬きをした。

「俺、覚えていないんだけど。君と会ったことあるかな?」

 少年は僕へと視線を戻すと「無いよ」と即答した。

「見たことあるって言ったじゃん」

 話を聞いていたのか、と言わんばかりだ。この年齢特有の、小馬鹿にしたような、小生意気な口調。

「ソウデスネ」

 いくぶん大人げないとは思うが、少々腹が立ったので横を向いた。

「じゃあ何で『だれ?』って聞いたんだよ」

 口の中で呟く。
 彼は耳聡く、僕の声を拾う。

「見たことあるから」

 それが理由らしい。

 子供だと侮った。思っている以上に、こちらを見ている。

「やっぱり、わからないや」

 少年は手足を放り出す。木漏れ日に、彼の目がきらきら反射する。場違いな気がして目についた。

 僕は息を吐くと少年の傍らに座る(元々、僕が先にいたのだが)。

 彼は口を開かない。風が柔らかに吹く。すると、ざわりと木の葉が音を立てた。

(寝ているのかな?)

 ちらりと様子を伺う。

 彼はじっと空を睨んでいた。