女子の顔がひきつっている。一部の、女子だが。
彼女たちは辛うじて「そうだね」という相槌や「頑張って」という励ましを口に出した。
僕は彼女たちを「頑張ったよ」と言ってあげたい。余計なお世話だろうと思うので口にはしない。
「ありがとう」
海は相変わらず白々しい笑顔で応えている。
「今は菖蒲ちゃんが一番だから、逆にそれが良いんだ」
海の瞳に僕が写る。どういうことだ、と口にする前に友人が続ける。
「今は余計なものは見えないから」
水藍の一番が菖蒲なら、自身はその後になる。
菖蒲に好きな人でもできたら、彼女はようやく自身のことに目を向けるのだろうか。
だが、それは。
「菖蒲を水藍から奪うなんて、難しいだろう?」
彼女たちはお互いに、お互いを大事にしている。実は、海は菖蒲に嫌われている。
お前の言葉を借りるなら、と前置きする。
「騎士である水藍の眼鏡に敵わなくちゃならない。それ、」
「めっちゃ難しくね?」
僕の言葉を級友が引き継いだ。思わずもれてしまった、というように彼は口元を押さえた。