伊勢くんは私から目を逸らさない。私の方が逸らしてしまう。

「静矢が呉羽さんに手を貸すわけない」

 当たり前でしょ、と静矢くんと同じことを言う。

「否、違うか」

 私の視線は彼に吸い込まれていく。

「静矢は呉羽さんに手を貸さないんじゃない」

 ごくりと喉が鳴った。その先を、私は聞けるか?

「手を貸す必要すら無い」

 私の中でざわりと蠢くもの。背筋をはいのぼる、暗い感触。

「判らない? 静矢の中にいる彼女は、それくらい完璧なんだ」

 私は「それくらい、」と繰り返す。

 静矢くんは「ユキに手を貸すわけない」と言った。そういえば、その後。

 伊勢くんは「呉羽さんの存在はそれくらい?」と確認した。

 静矢くんは何て答えたっけ?

 背中がぞわぞわする。落ち着かない。