「芦田、」

 少年に呼び掛ける。

「俺の話をするよ。俺は、」

 言葉が切れてしまう。

 芦田が顔を上げる。意図したわけではなかった。たまたま、切れてしまっただけだ。

 それでも芦田の顔を上げさせたので、結果、良かったのだろう。

「俺も、同じだ」

 芦田の瞳がくるりと丸くなっている。

「お前と同じ」

 少年は眉根を寄せて、小さく首を傾げる。

「失ったのは、俺じゃない」

 どんなに伸ばしても届かない手。喉が嗄れるほどの声。

 抱いた絶望も失望も、錯覚するほどだけれど。

 それは。

「俺であって、俺じゃあない」

 あれはきっと、夢でしかない。