嶋木は、拳を握って歩いてゆく。何かを堪えるように、固く。

 決して振り返らない、背中。地を踏みしめて去ってゆく、後ろ姿。

 その姿が、ダブる。

 手を振る唯の姿が、重なる。

―内緒だよ、

 思い出す。唯の秘密を。
―わたし、一人っ子じゃあないんだ

 続けられた言葉。

―わたしには、お兄さんがいるんだ

 お父さんが違うけれど、と付け加えられた言葉。

 私の反応など気にしないかのように唯は話し続けた。

 唯は、吐き出したかったのかもしれない。

―お母さんは、再婚なんだ

 アイスを食べながらする話じゃあないだろう?