貴女は、と嶋木が続ける。

「唯の姿を追って……。いないと判っているはずなのに。誰かを、見ていた」

 ゆらゆら、ゆらゆら。
 溶けて流れる氷。揺らめく陽炎。灼けるアスファルト。追っても辿り着けない、逃げ水。

「気付いていましたか?」

 嶋木が振り返る。
 困ったような顔。眉根を寄せて、私を見ている。
 哀れんでいるのだろうか。

「貴女はずっと、現在形で話している」

 嶋木はもう一度「気付いていましたか」と問うた。
 嶋木は私を見ている。

 私も嶋木を見ている。視界に捉えている。彼の、話す声も聞こえている。

 それなのに。

 虚ろな感覚がする。

 虚ろなのに、感覚というのもおかしいが。薄らぼんやりとしたような、感覚がない感じというのか。

 嶋木が遠い。

 嶋木と私の、否、世界と私とが隔たっている。