雨に埋もれる視界。

 唯が、溺れてしまう。

―里緒、

 唯の顔が見えない。

―わたしを悼んで泣いてくれる

 唯は「それだけで」と続ける。

―それだけで、充分だよ

(何、言っているの?)

 充分なわけ、ないじゃない。

(どこが良いのよ?)

 良いわけないじゃない。それだけで、なんて。良いわけないでしょう。

 少なくとも、私は。

「私は、もっと、唯と話を…。もっと、唯と、遊んで、」

 喉の奥から声を絞り出す。

「もっと、唯と、先のこととか…。もっと、唯と、いろんな…。もっと、色々と、」

 もっともっと。
 たくさん。

「世界を、見て、」

 そうやって、一緒に。

「一緒に、大人に、」

 なりたかった、と口にはできなかった。