泣いて忘れられたくない。

 誰かに、自分を忘れられてしまうことは辛い。大事な人であれば、尚更。
 その中に私が。

 誰の『大事な人』の中に、大久保里緒が入っていたと思うのは、おこがましいだろうか。

(何で?)

―わたしを忘れて、

 嫌だよ。

 口の中で呟く。

 唯が、言うの? 忘れてって私に?

(そんなのってない、)

 視界を塞ごうとする、分泌液。
 思わず、瞼で払ってしまう。

 口を覆う手に、生暖かい水滴が伝う。

「ゆい、」

 一度、こぼれてしまうと止まらない。