嶋木は電話しながら頭をかいている。

 電話の相手と話が会わないのか、スラックスの横を指先で何度か叩く。

 冷静そうな嶋木にしては落ち着かない仕草だ。

 カランとグラスが鳴る。グラスに視線を移す。

 氷が溶けて、透明な層を作っている。

―里緒、

 唯。

 私は鞄に手を伸ばす。中から唯の日記を取り出す。
 ぱらぱらとページを捲る。唯の日常生活。
 学校のこと、友達のこと。好きなテレビやアーティスト。

『里緒と買い物、』

 唯。
 私はその文字を指先でなぞる。

「里緒!」

 私を呼ぶ、声がした。