―唯が言ったの、

 嶋木は突っ立ったまま、動かない。

「そうですけど、何か?」

 嶋木は口唇を結んで、首を振った。

「唯も誰かからの、受け売りだったみたいですよ」

 私の言葉に嶋木の顔が歪んだ。何かを、堪えているみたいだ。

 赤ちゃんの泣き声が響く。私たちの意識がそちらに奪われる。赤ちゃんは、両親が必死であやしている。

「唯とお参りに来ていないな」

 呟く。

―今度は、お参りに来ようね

 そう約束をした。
 その約束も果たしていない。

 私は歩を進める。足音で嶋木がついて来ていることを確認する。

 嶋木は何も言わない。私も何も言わなかった。

 蝉の声が響く。時折、微かな風が木の葉を揺らした。