嶋木のその瞳。どこかで、見たような…?

「かげらうというのは、」

 嶋木の声に思考を奪われる。

「木陰とかの『陰』という字に、古典で習うでしょう? らうというのは『ろう』です」

 陰らう。
 つまり「かげろう」。
 陰になるということ?

「陽炎とは、幻」

「マボロシ…」

 陰になるということは、それは、本物ではないということ。

 実体ではない、虚像。

 嶋木の声がゆるゆると、静かに染み込む。

 沈黙が流れる。

「どうか、した?」

 嶋木のテンポは独特で、そしていつも静かに話す。

「イエ、」

 声が掠れる。嶋木はそんな私に、少し首を傾げる。

「ちょっと、思っていたよりも熱かっただけです」

 嶋木は「あぁ、」頷くと空を仰ぐ。