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Juliwolfmunのブログ

腐女子じゃなく主腐じゃないかと自負するもののブログです。
ここのサイトの作品は、二次創作であって、出版社様・原作者様とは全くもって関係がございません。

二人で命からがらこのスラムに逃げ込んで早半年ーー
クラウドの病状は、良くなることはなく…かといって悪化しているわけではない、一進一退をつづけていた。

約束通り、週に何度か診療所のシルビアが往診に来てくれて、その都度新しい治療法について話してくれる。
彼女はクラウドの魔晄中毒の進行をとにかく遅らせることに、治療の柱を置いたらしい。
勿論、完治を目指してはいるが、なかなかその方法がわからず時間がかかりそうだ。その間にもクラウドの進行が進んでは身も蓋もない。
ザックスとしては、さっさと治して昔と変わらない生活を送ることを望んではいたが、そうすることが自分たちの幸せの為だと言い聞かせられれば、文句は言えず素直にその治療方針に従うしかなかった。

しかし、生活していくには先立つ物が必要だ。クラウドの治療費はシルビアが全額負担すると言い出した。
俺はそれはダメだと強く固辞したのだが、昔恋人を救えなかった罪滅ぼしをしたいのだと聞いてはもらえなかった。
俺は頭を深々と下げて感謝の意を告げた。

「バカね、あなたの為じゃないわよ」
と、照れ臭そうに笑い俺の方を叩いて診療所に戻って行った。

それでも、二人で生活していくにはお金が必要だった。
クラウドを一人っきりにして行くのは憚れたが、これまた友人のマイケルが
「食事はなんとか食わしてやっておくよ。こいつこう見えても昔ナースだったんだぜ?」
と、カウンターでツマミを作っているマイケルの彼女を指差して言った。
こう言っちゃなんだが、ガサツなマイケルには似合わない栗毛色の、ショートヘアの女性ーー名はジャネという。ーーで綺麗な女性だ。

「ザックスさん?出来る限りお世話させていただくから、あなたは叶えたい夢があるんでしょ?その夢が叶うように頑張ってお仕事してきてね。」

花がほころぶような笑顔を見せられてら。そりゃ男としては折れるしかないっしょ?

なんだが俺たちって、なんやかんや言いつついい友人に恵まれてんな、と嬉しくなった。

***

ザックスはクラウドが倒れても怪我のないように、ベッドに腰掛けさせた状態で、周りをクッションで囲んで仕事に出かける。

前にベッドに腰掛けただけにして出かけたら、帰ってきてクラウドがベッドのしたに落ちていたのを見てから、そうするようにしていた。

「今日は近場の仕事で、屋根の雨漏りの修理と犬の散歩だ。近場だからいつもよりは早く帰ってこれるとおもうぜ?」
そうクラウドに言い聞せ、部屋から出た。



「すまないねぇ~わざわざこんな事頼んでしまって。」
「いいよ、その為の何でも屋なんだからな!何でも屋声かけてよ?」




***
その頃、残されたクラウドに一つ進展があった。

少しだけだが正常でいられる時間が見られるようになった。とはいえ、手足が自由に動いたりするわけではないのだが。
本当に意識が現実の世界に戻ってきている時が出来た。それは残念ながらザックスが仕事で側を離れている時間に多い。

今日も太陽の日差しが窓ガラスを通して暖かくクラウドを包み込むよう時間にそれは訪れた。

(今何時なんだろうか?)

少し意識を集中させると、目は動かせることに気がついた。クラウドは部屋の中をゆっくり見渡した。
すると、窓際にカレンダーらしきものが置かれていた。それは12月を示していた。

(12月?久しぶりのザックスとのミッションに出たのが夏に近かったから…あれからどれくらい経ったんだろう?っていうか、ここは何処だ?)

俺はとにかく頭の中を整理しようと、いろんなことを考えた。

(ザックスとあの神羅屋敷の研究所から逃げ出して…ザックスが撃たれて…血が沢山!)
(そ、そうだ!ザックスは?!)

ゆっくりと目だけで部屋を見渡しても、ザックスの姿は見当たらなかった。

(ザックスは死んだんだ…俺を守り続けて…でも、いつもかすかに聞こえてくるあの優しげな声は?あれはザックスの声じゃないのか?)
(わからない…何もわからない…怖い!助けて!ザックス!)

急激に襲ってきた恐怖心が、体全体を覆い尽くした。しかし、まともに支える力すら残されていないこの身体にそれを防ぐ手立てはなかった。
俺の体はベッドの上から転げ落ち、冷たい床に叩きつけられまた意識を失った。



***

その頃、ザックスは依頼でいった町での仕事を終え帰途につこうとしていた時、突然依頼宅の娘さんが腹痛を訴えて苦しみ出した為、乗ってきた車に乗せて隣村の診療所まで行っていた。
娘さんは17、8歳くらいで、両親が仕事で遠方に行っておりしばらく帰ってこないとのことで、一緒に来た人が入院の準備をしてくるからそれまで付き添ってやって欲しいと依頼され(勿論、依頼料は頂いた。)、病院で足止めをくらっていた。

とにかくマイケルに今日戻れなくなった事を伝えてクラウドの世話を頼まなくては…と携帯電話のメモリーから目的の番号を探し出し、発信ボタンを押そうとした時、ナースが病室に入ってきて厳しい顔して言った。
「病院で携帯電話はご遠慮ください!」
ルールをすっかり忘れていた俺は、ばつのわるそうに携帯電話をしまおうとしたとき、先ほどのナースが手を差し出して言った。

「この病院では、あらかじめ携帯電話は受付で預かることになっているので、今お預かりしますね。」


天使の笑顔であっさりと俺の手から携帯電話を奪い取って、ナースは病室を後にした。

(しまった…どうするよ?マイケルのメアド聞いておくんだったな。)

結局、付き添いから解放されたのは空が明るくなりかけた頃だった。
俺はようやく病院にやってきた娘さんの親御さんに、依頼料をたんまり貰って車に飛び乗り、急いで帰宅の途についた。


***

自宅に着き、ドアロックも漫ろに階段をかけあがってドアを勢い良くあけ、部屋に飛び込んだ。

「クラウド!ごめん!遅くなった!」

クラウドが待っているだろう寝室に走って行くと、そこにはクラウドの姿は見当たらなかった。

「クラウド?」

焦った俺は、ベッドに飛び乗りクラウドを探した。すると、ベッドサイドの床にクラウドは落ちていた。
急いで抱き上げると、クラウドの身体は冷たくなっていた。

「おい!クラウド!しっかりしろ!」

俺は殆ど反応のない、いや元々反応はないのだが、クラウドを背負い車に乗せシルビアの診療所に向かった。
「ごめんな。仕事で遅くなった。早く帰れそうだって行っていったのにな。」

診療所に着いて、クラウドの様子を診たシルビアは、急いで温めた蒸留水を点滴で身体に入れた。

「一体何があった?」
俺は、震える手を握りしめうつむいたまま治療を受けているクラウドを見つめていた。
「何があったのか聞いているんだ!ザックス!」
「……クラウドは…大丈夫なのか?」
「低体温症を起こしてる。体温はかなり低い。普通の人間だと死んでいる体温だ。今急いで暖かい蒸留水入れているが…」

クラウドが死ぬ?俺の前からいなくなる?そういう現実が目の前に起きて俺は動揺していた。
クラウドがいなくなったら俺はどうなるんだろうか?

「ザックス、お前がクラウドを一生懸命面倒みているのは理解している。しかし、次こういうことがあったら今日みたいに助かるかどうかはわからない。」
そう言ってシルビアは一枚の紙を差し出した。
「今度神羅が設立する、ソルジャー専門の保養施設だ。ここにクラウドを預けてみないか?ここだとクラウドの治療法も見つかるかもしれない。」
「神羅?先生も知ってるだろう?俺たちは神羅から命かけて逃げてきたんだ、それなのに…クラウドをそんなところに行かせるわけにはいかない!」

ふぅと大きな溜息をつきながら、スケジュール帳を開きなんやら思案しているようだ。
チクタクと、机の上の時計の秒針の音だけがまるで自分の鼓動と連動しているかのように鳴り響いている。
パタンとスケジュール帳を閉じる音に気づき顔をあげれは、何とも言えない困惑顔でシルビア女史がこちらを見ていた。

「ふぅ…仕方がない。私が往診する日を増やそう。でも、ザックスも横の連絡網をちゃんとしておけ。わかったか?」

俺はやり切れない気持ちで、でも俺の思いを汲んで提案をしてくれた女史に感謝の気持ちを伝えて、病院を後にした。

今日は報酬がたんまり入ったので、久しぶりに甘いものでも食わせてやろうとマイケルにクラウドを頼み、俺はスラムの市場に足を運んだ。

いくらスラムでも、ここら辺は神羅の兵士達もぞろぞろ入り込んでいるので、余程のことが無い限りここには来ない。
目的のものを買ったらさっさと立ち去ろうと、物を物色していた。

昨日今日のドタバタ続きで、流石の俺も疲れが出ていたのだろう。市場の雑踏に気疲れした俺は、静かな場所を探して見つけた公園のベンチに腰掛けていた。
そして何気無く見上げると、目の前に古びた教会があるのに気がついた。
俺は正直いって無宗教者だ。神様なんで信じちゃいねえ。神様がいるんなら今この状態はなんなんだよ?と憤慨してみる。でも、その時はその教会の俺は吸い込まれるように教会の扉を開けていた。

***

教会のなかは、神を祀るとかそういう厳粛さではなく、真ん中にこの世界では珍しい花が咲き誇っていた。俺は持っていた買い物袋を椅子に置き、その花の一つに手をかけようとしたその時ーー

「お花、綺麗でしょ?」

声のした方を見ると、ブラウンの巻き髪の女性がいつのまにか俺のまえに同じようにしゃがみこんでいた。
いくら鈍ったとはいえ、元ソルジャーだぞ?気を抜きすぎだろ?俺。
全く気配を感じなかった自分に呆れつつ、その女性を見つめた。
気配を感じなかったのは、彼女が何の警戒心を持たないからだろう。

「女神さま?…」
「んー…残念。違うよ。」

コロコロと綿帽子が転がるように笑う彼女は、聞くとここで花を育てているらしい。不思議なことにここにだけ花が咲くらしい。

「貴方お名前は?」
「お、俺?ザックス…。ザックス・フェア。君は?」
「私はエアリス。ザックスくんは何か悩み事でもあるのかな?辛そうな顔してる。」
そう言ってエアリスの細い指が俺の眉間を撫で付ける。

「ザックス、綺麗な目をしてるね。まるで空みたい。」

空?そう言えばまだ神羅にいた時、クラウドの天然の碧眼を見て俺が告げた言葉だ。言われたクラウドは白い頬を真っ赤に染めて照れていたっけ。

「そうか?俺なんかより…いや何でもない。」
「で?ザックスは何でここに?」
「ちょっと色々あってね。少し疲れていたのかな?ついここに足が向いた。もしかして迷惑だったか?」
「ううん、ここは誰でも来ていい場所だから。」

俺は昔はいろんな女性と知り合った。それこそ付き合った女性やらその場限りの身体だけの関係の人も含めて。でも、彼女はそういう女性とは違う清らかなものを感じるんだ。
クラウドも庇護欲を感じさせる存在だが、またそれとは違った…癒しの力を彼女は持っているんだろうか?
彼女が俺の両肩に手を置いただけなのに、そこから暖かい気が流れ込んでくるのに気がついた。

「ザックス…焦らないで。きっといつかあなたが悩んでいることは解決するわ。」
「何を悩んでいるのか知らないのに、なんでそう言い切れる?」

あまりの知ったかぶりに、少し苛立ちを感じて、キツイ言い方になってしまう。

「ごめん、怒らないで?私は星の声を聞くのが使命だから。ザックスの眼。青い眼。ザックスはソルジャー?なの?」
「…昔な…」
「だったら聞いたことない…かなぁ?セトラ…古代種って」

古代種…ソルジャーだった時に少し聞いたことがある。確か、神羅の監視対象だったはず。

「私はその最後の生き残りなの。まあ、純粋なセトラじゃないんだけどね。セトラの使命は星の声を聞いて人々に伝えること。だけど…こんな事他の人に話したら、おかしい人って警戒されちゃうでしょ?」
「俺は?俺は警戒しないと思った?」

エアリスはこくんと小さく頷いて笑った。
「ザックスは求めてたから…支えの手を。」

俺はハッとした。彼女には見抜かれていたのだ。確かに俺は、いろんな現状からうまく行かずに救いの手を求めていた。そんな弱い心を…。

エアリスの白く細い指が俺の顔にすくうように動いた。エアリスの指先が濡れているの知り、俺は泣いていることに気づいた。
俺は恥も外聞も捨て去り、目の前のエアリスにしがみつくように抱きつき泣きじゃくった。
そんな俺をエアリスは、まるで母親が子どもを宥めるようにずっと体をさすっていてくれた。



どれだけの時間がたったのだろう。気がついたら俺は泣き寝入りしていたらしい。子どもかよっ!エアリスが湯気がたったカップを差し出し飲むように進めてきた。俺は素直にそれを受け取り、一口口にした。それは少し甘く、喉を潤し俺の渇ききった身体も潤していった。

「迷惑かけたな。ごめん。」
「ううん、ザックススッキリした顔してる。」
そう言ってまたコロコロと笑う。その笑顔にやられた俺は今度はそっと優しくエアリスを抱きしめた。

「また…来てもいいか?」
「うん。待ってる。」

そう言ってエアリスは俺を送り出してくれた。
ここ何年も忘れていた俺の中の感情が、ここに来て溢れてくるのに気がついた。
この事が俺の今の環境に新しい風が吹いて変化をもたらすことを、この時の俺はまだ気がついていなかった。

2013/12/9