久しぶりに手紙が届いた。
ーーお元気ですか?クラウドはいっつも留守電ばかりで繋がらないから、手紙にしました。ーー
と、苦情から始まったマリンからの手紙に懐かしさを覚えて頬を緩めながら
薄いシーツを敷いただけのベッドに腰掛けて、手紙の続きを読み始めた。
ーーまずは近況報告です。とうちゃんとティファは、相変わらず仲良しです。妹のシャインはもう18才になるのよ?ーー
「へぇー、もうそんなに大きくなったのか…俺も年取るはずだよな」
ーーただ、おとうちゃんが最近腰を痛めてしまって、発掘の仕事が出来ないでいます。代わりにお弟子さんたちがやってくれてはいるみたいだけど、ちょっと腐っています。ーー
ーー私はデンゼルとなんとかやっています。でも元々家族だから、家族としては上手くやっていけてるんだけど、夫婦としてはどうかな?って感じです。デンゼルは相変わらずWROに入り浸りで殆どうちには帰ってこないし…。何でも元ソルジャーだった人が新しく仲間入りしたらしくて、その人に色々教えてもらうのが楽しいらしいです。
仕方がないので、私からWROに押しかけているんだけどね。たまに迷惑そうにされるのが悲しいです。ーー
「マリン…」
ーーで、ここからが本題なんだけど、一度クラウドと会ってお話がしたいの…。そちらに次の日曜日に伺わせてもらうわね。ティファには聞けない話もあるし。じゃね!逃げないでよ、クラウド!ーー
読み終わった手紙を元通りに折って封筒にしまい大きくため息をついた。
「日曜日に来るって…明日じゃないか。」
スケジュールを確認すると、都合のいいことに明日は依頼が一件も入っていない。
理由はある。
この身体になってから、ある周期で深い眠りにつくことがある。
それこそ死んだように眠ることが。
それがそろそろ来そうな予感がしたから、オフにしておいた。
「明日は久しぶりにゆっくりと寝ていようかと思っていたんだけどな。」
ふと部屋を見渡したが、女性を招き入れる部屋ではない、どう見ても。
客も来ないから奥の部屋にしまいこんでいたソファーセットを引きずり出し、軽く掃除をしていて気がついた。
「妙齢の女性をベッドルームに招き入れるのもなぁ。」
とはいえ、もう一つの部屋は物置と化している。
「マリンだしな。うん、いいか」
と思い、とりあえず疲れた体をベッドに横たえた。
***
「クラウド!いる?おはよー」
まだ外は白々と明るくなってきたばかりの時間帯に、ドンドンとドアを叩かれ寝ていた頭を動き出させながら、ドアに近づいて行った。
仕方がなくドアを開けると、そこには自分の記憶よりかなり大人になったマリンが立っていた。
「久しぶりね、クラウド。逃げなかったんだね?エライエライ。」
そう言って、招き入れた俺の後をついて部屋に入ってきた。
逃げる時間がなかった…というのは言わないでおこう。
「大きくなったな?マリン。」
「年取ったって言いたいの?まあ、クラウドはやっぱり全く変わってないね?」
「予想通りな」
「私も28才になったからね、そりゃ変わるでしょ?」
夕べ急遽引きずり出してきたソファーセットに案内して、紅茶を差し出した。
「クラウド、紅茶入れられるの?意外ね。」
「俺も紅茶ぐらいは入れられる!」
俺の言葉を全く聞かずに、部屋をぐるりと見渡して一言
「紅茶"しか"いれられないんでしょ?どう見ても自炊しているようには見えない。相変わらずの殺風景な部屋…」
図星だったのですこし大人気なく、嫌なら帰れとばかりの悪態をつく俺に
「もう!すぐに怒るんだから。」
と口を尖らせる様子は、子どもの頃と変わっていなかった。
「で、何の話があるんだ?何か話があるんだろ?わざわざこんな辺鄙な所にまでやってきたんだから。」
ハッと何かを思い出したらしいマリンはドアの方に近寄って言って、外に向かって何か話しているようだった。
「クラウドに久しぶりに会いたいと思ったのと、デンゼルが最近仲良くしている人を紹介したくて…一緒に来てたんだった!!」
おいおい、まあ一人でこんな所まで来るのは大変だから誰かときたのかと思っていたが、忘れてたのかよ…
「デンゼルと?」
「うん!多分、クラウドも知ってる人だと思う。ねぇ、一度あってみて?」
「俺は…」
「拒否権なし!」
元々人と接するのが得意じゃない上に、ここ何年も客意外とは会話もない俺は、マリンの行動に少し参っていた。
そういえば、昨日の手紙に書いてあったな…元ソルジャーだった人と。
俺はソルジャーじゃなかったから、知り合いなんかいないに等しいんだがな。
マリンの「入ってー」の声で、入ってきたのは、これまた大人になったデンゼルだった。身長は俺よりかなり伸びてる。
「クラウド!久しぶりだね。」
「ああ、デンゼルも元気そうだな。」
「毎日訓練してるからね。腕もホラ!」
と袖をめくり上げて見せた二の腕は、俺が望んでも得られなかった立派な筋肉が付いていた。
少し悔しい思いで半笑を返した。
「で、マリン、もう一人の客人って?」
「ああ、何年か前にWROに入ってきて、クラウドと同じ目の色をしているから、多分ソルジャーだった人だと思ってたんだけどね、その人。最近はWROも元ソルジャーが増えてきてさ?聞いてない?」
聞いてないとは、多分リーブからという意味だろう。少しずつ生活に困っているソルジャー達を集めているとは聞いていたが、拒否する人も多いらしい。
でも、研究所がなくなり、ソルジャー達も身体を制御出来なくなってモンスター化する者も増えてきたので、多少なりとも知識のあるWROに駆け込む輩も増えていると聞いた。
「ああ聞いてるよ。」
「所長はいつも言ってるよ。"これでクラウドはんが来てくれれば、鬼に金棒なんやけどね"って。」
「悪いな、俺はもうどこにも所属するつもりはない。」
「知ってる。所長の片思いだって愚痴ってた。」
そう言ってソルジャーを連れて来ると、外に出て行った。
「さあ入って!紹介するよ。こっちが俺の養い親であり俺の憧れの人でもあるクラウド。」
そう言って招き入れた男に俺は目を疑ったーーー
「う、嘘だろ?」
「やっぱりクラウドか?!」
「クラウド、知ってるの?」
そんなはずはないーー彼はあの雨の日、あの丘で俺なんかを庇って死んでいったんだ。
でも、目の前にいる男の声は間違いなくあいつの声で…
「俺、お前をずっと探してた。そしたらWROにはお前を知ってる奴がいると風の噂で聞いて…でも中々確証を得られないし…。でもこいつと同室になってから、こいつの話に出てくる人物がクラウドに間違いないって…よかった…無事生き延びていたんだな…」
そう言って男は俺の手を取り握りしめて来た。
「相変わらず綺麗な手をしてる。」
俺は思わず手を払いのけて、その男に向かって怒鳴った。
「あんたは誰だ?俺の知っているあんたに似たやつは、もう随分前に俺の目の前で死んだんだ!!まるで人形のような俺なんかを庇って!!」
「死んでいなかったんだよーーあの後、ジェノバの力か何かで目を覚ました俺は、とりあえず体を休めようとミッドガルを目指した。そして、スラムの昔からの知り合い達に匿ってもらっていたんだ。そのうちに星が堕ちるとかの騒動があって、もう大丈夫だと表に出ることにした。」
「その間もずっとお前の事を探してた。そうしたら知り合いが持ってきた新聞にお前の記事が載っていて…でも、詳しい居場所はわからないから、人伝に"星を救った英雄達のことならWROに行けばわかるかも知れない"って言われて…。」
「嘘だろ…」
「嘘じゃない!」
「じゃあもっと早く…」
「動けなかったんだ。全身に銃弾を浴びた俺は、確かにジェノバの力である程度は回復した。でも、傷を回復するのにジェノバの力は使い果たしたみたいでさ…もう俺の細胞には殆どジェノバ細胞は残っていない。残っているのは魔晄で強化された細胞だけだ。それも年々減って来ている。」
「今の俺は、昔のようには戦えない。」
「…」
「俺をよく見ろ、クラウド。年相応に年取っただろ?」
そう言われて顔を上げて見ると、確かに昔とは違って、目元などにシワが見える。
「俺の体験を元に今、WROの研究所でジェノバ細胞除去の研究が進んでて、実用化されているんだ。」
「あの研究、実用化されたのか…」
何年も前に、そういう実験をしているとリーブから聞き、もしかしたら俺も…と検査してもらったが、残念ながら俺の場合は全ての細胞がジェノバ細胞と変換されてしまっているので、その恩恵にはあずかれないと最悪の結果が出た。
「俺は…無駄だったけどな。」
「そうか…」
「あんたは…普通の人生をこれから歩めるんだな…よかった…」
「普通の人生?お前が側にいてくれればな。」
下を向いたままの俺の側に近づいて、肩に手をおいてマリン達に話しかける。
「デンゼル、すまないが先に帰っててもらえるか?」
そうデンゼルに伝えると、一瞬不快な顔を見せたが思いが伝わったのだろう、渋々ながら了解した。
「クラウドを悲しませないって誓える?」
「ああ。」
「わかった。所長には伝えておくよ。ザックスは少し働きすぎだから、ここらで休暇取るのもいいんじゃないの?まだまだ俺を鍛えてもらわないといけないし。」
「すまないな、頼むよ。」
「帰るぞ?マリン。」
「でもっ!」
「一度セブンスヘブンに帰っておいでよ?こいつのためにもさ」
「ああ。」
何か言いたげなマリンの背中を優しく押してデンゼルは部屋から出て行った。
二人がいなくなった途端、部屋が何時ものような無機質な物に戻ってしまった。
「………」
「………」
沈黙に耐え切れなかったのは、自分ではなく目の前の客人の方だった。
「あのさ…クラウド?」
「…」
「俺の名前覚えているよな?」
「えっ?」
「俺がここに来てから、まだ一度も俺の名前呼んでくれてないよな?」
「……忘れるわけない!」
「よかった!じゃあ呼んで?俺の名前。」
そう言って見せた笑顔は、あまり見たことのない躊躇いを含んだ物だった。
「…呼んでもいいのかな?」
「ん?」
「俺、ずっとあんたの事思って生きてきた。街で似たような人を見かけては、いつも裏切られ続けていた。ついこの間も、カームの祭の最中に配達に行ったら、あんたによく似た人が屋台で物売りしていて…声をかけそうになった。でも、いつもいつも覚めちゃう夢なんだ!!後で悲しみが俺を襲って来て胸が引き裂かれる思いをする!!もう嫌なんだ!ああいうのは!たから…」
「クラウド!夢じゃない…夢じゃないんだ。俺は現実にここにいる。それに…そのカームの物売りは…多分俺だ。人手が足りないからって一日だけ手伝いに借り出された。そっか、クラウドもいたのかー」
こうやって、いつも俺を引き上げてくれてたんだよな?あんたは。何十年経っても俺は情けないままだ。
「さあ、呼んで?」
「ザックス…」
「ああ、なんだ?クラウド。」
「ザックス!!」
俺はもう耐えることが出来ずに、目の前のザックスに飛びつき昔と変わらない大きな胸に全身を委ねた。
胸にくっつけた耳に、ザックスの元気な鼓動が聞こえてくる。
「本当に生きてるんだな?」
「幻じゃないんだな?」
「ああ。」
「お、俺!ザックスに会ったら言わなきゃいけないことあるんだ!」
「自分のせいで俺が死んだとかいうの以外だったら聞いてやるよ?」
「ズルイよ、ザックス。先に言われちゃ俺は言えないじゃないか。」
「だって、生きてるし俺。クラウドが罪悪感感じる事なんにもないんだぜ?確かにあの頃の俺はお前を守って死ぬことは本望だと思っていた。でも、こうやって年取ってみて、あれは自分の独りよがりにすぎないって思うようになった。残された者はたまったもんじゃないよな?謝るのは俺の方だクラウド。」
言葉を出したいのに、嗚咽が湧き上がって来て口が開けない。
その事に気がついたザックスが、昔のように背中をボンボンと叩き慰めてくれた。
「でも、よかった。リーブが言ってた実験が成功して。最近、多かったんだよ、元ソルジャーによる事件が…。あんたも…普通の人生をおくれるんだよな?よかった…」
「ねぇザックス、俺見て?一時期は見た目23才くらいまで年取ったんだけどね、ここ何年かであの頃の俺に戻っちゃった。こんなの異常だよ。だから、あいつらと離れて暮らすことにしたんだ…。」
「クラウド…」
「戦いの旅の途中に、宝条に会うことがあって色々聞いたんだ。俺に行った実験は"セフィロスコピー"にすることだったと。だから、俺あいつの人形なんだ。今はセフィロスも眠っているから無事だけど、もし起きたらまた操り人形になるんだよ…。」
ザックスは少し顔をしかめて俺の話を聞いていてくれていた。
いつの間にか、二人でソファに座りザックスはずっと俺の手を握りしめていてくれていた。
「そうすると…俺は自分が止められない。だから、俺は一人でいいんだ。」
ダメだ…今日は体調が悪い…。このままだと眠ってしまう…言わないと…。
「ザックス…俺さ、今日は時間がないんだ…。多分、何しても目を覚まさない。たまにあるんだ…そういうことが。だから…言いたいことだけ言っておくね?もし、俺が寝てしまってもほっておいて大丈夫だから…明日には起きるから」
「えっ?それって?」
ザックスの質問にも答えずにとにかく話を急いだ。
「結論だけ言うね。ザックス、せっかく普通の人生をおくれるんだから、俺のことなんか忘れてさ…幸せになってよ。引く手数多だろ?ザックスだったらさ。そして子ども出来たら教えて?一目だけでも会ってみたいな…可愛いだろうね?ザックスの子ども…。俺が紹介してあげたい所だけど…生憎そういうのには伝がない…から…。それと…ありがとう…俺…を…助け…てくれて…」
そこまでで俺は限界を迎えた。目を覚ました時にはもういないんだろうな…。
***
ダンダンとトタンを打ち付ける雨の音で俺は意識を取り戻した。
やはりあの日が来たんだな。ボンヤリと身体を戻して行く。こうなった後はいつも身体が凍ばっていてすぐには動けないんだ。まず手の指先に神経を集中させて動かす。そして足、と徐々に神経を戻して行く。
ようやく少し身体が緩んで、首を動かせるようになった。どうやらベッドで寝ているようだ。
ザックスが寝かせてくれたのかな?
身体を触るとパジャマ代わりのシャツに着替えている事がわかった。
ふとコーヒーの香りが漂って着ていた。
誰だ?マリンが戻ってきたのか?
まだ完全に戻っていない視力を必死に戻そうと目をしかめて香りの元を見つめた。
マリン?…じゃない、あの後ろ姿は…
「ザックス?!」
「おお、起きたか?」
「な…んで?」
「なんでって、あんなお前をほっとけるわけないだろ?しっかし、本当にビクともしないのなー?何しても起きなかった。」
何してもって、何したんだ?
「別にいつもの事だから…」
「なあクラウド…もう一度調べてもらわないか?もしかしたら…」
「無駄だよ。一番最初に俺を調べたんだから…それこそ身体の隅々までね。仲間たちが…俺のためにね。でも無理だった。言ったろ?俺はセフィロスコピーだって。細胞の一つ一つがあいつと同じなんだ。自分のオリジナルなんてなに一つ残っていなかったんだ!」
「ごめん…。」
「いや、いいんだ。それよりザックス、早く帰った方がいい。そしてデンゼルに稽古つけてやってくれ。あいつ筋はいいはずだから。」
「確かにあいつ筋はいいな。あいつと訓練してると、昔お前とやっていた時を思い出すんだよな。にてるなあいつとお前。憧れの人なんだって?あいつの。」
「ああ、らしいね。」
「昨日の話の答えを今伝えていいか?クラウド、こんな時に言うのはなんだけど、俺はお前を愛してる。昔と全く変わらずにな。お前が何て言おうが俺はお前だけを愛してる。ダメか?」
「どうして?俺はほぼ永遠に死なないし年も取らない。こんなの人間じゃないだろ?気持ち悪いだろ?」
「そんなの!関係ない!俺の愛を舐めるなよ!」
「とにかく!あの頃の…あんたが愛してくれていた頃の俺とはもう違うんだよ…。」
「どこも違わないじゃないか!」
とにかく俺を諦めてくれるようにと、俺は必死に説得した。
「俺は、一緒に住んでいた頃ティファとも関係を持ったことあるし、金がない時は、そっち方面の依頼も受けていた。旦那がいないとか相手にしてくれないとかで、そう言う客は結構金払いがいいからね。俺、女性経験がなかったからそういうの新鮮だったし。一人で過ごし始めてからは、そういう依頼は受けていないけど…一晩限りの男を買ったりしていた。あんたが知っている俺はもういないんだ!」
半分は嘘、半分は本当。本当は男をなんか買ってない。男はザックス以外には興味がなかった。女性とも成り行きでなっただけで、商売としてやっていたわけじゃない。
「長い間一人で居れば当然だろ?俺みたいに身体を動かさなくなっているんならともかく、若い身体なんだからさ。」
「ど、どうしたらわかってくれるんだよ!」
「クラウド、俺の事嫌いか?俺を思ってくれる気持ち…昔と変わっちまったか?」
嘘でも…それだけは言えなかった…。愛しくてザックスしか要らないのに、嫌いになったなんて絶対言えなかった…その時点で俺の負けなんだな。
「……るわけない」
「ん?」
「変わるわけない!あんたが死んでから、死んだと思ってからずっとあんたの事思ってたんだ!!どうして変われるんだ…」
耐えてたのに、とうとう本心を暴露してしまった。俺の言葉を聞いたザックスは、昔見せた穏やかな笑顔を見せて俺を優しく抱きしめた。
「良かった…。嫌われたかと思ってたから…。なあクラウド、また俺たち新しく始めようぜ?確かに俺は年をとりお前は取らない。それは変えられない事実だ。それに、俺は何事もなくてもあと数十年で寿命を迎えてまたお前をおいて行く事になると思う。悲しませるだろう、でも今度はお前を守りつつ支えつつ自分の生き様をお前に覚えてもらえるくらいに長生きするつもりだ。だから、また俺と人生を歩んでもらえないか?」
昔、初めて彼から告白された時以上の忘れられない言葉をもらった気がした、
「俺なんかでいいの?た、例えばさ…」
「何?」
「例えば、俺じゃ出来ないこと…子どもをもうけたりしたくなったら…俺に気を使わずその人の所に行ってくれるか?」
「いらないよ。あのさクラウド、何か勘違いしてるみたいだけど、俺はお前との人生を選んでるんだ。子どもとか他の女性とかとの人生を選ぶことはない。」
「ううん、そうじゃないんだザックス。それを約束してくれないと、また俺はあんたを縛りつけたという罪悪感に悩まされる事になる。そうしてくれると一言約束してくれれば…俺は今までの事も全て過去の事にして新しく一歩を踏み出せる気がするんだ…もしかしたら、いざそういう場面に出くわしたら嫉妬でドロドロになるかも知れない。でもそれが今の俺には必要な感情なんだよ…。俺の感情はあの実験室に全て置いて来てしまったのだから…」
「クラウドがその約束をすれば気が楽になるというのならば、俺はそれに従う。ただ俺にはお前しか要らないということはわかってくれるか?」
俺はこくんと首を振った。
嬉しそうな顔のザックスをみて、心の中はいざとなったら身を引こうと心に強く持っている罪悪感を押し殺して、また俺はザックスの腕の中に、とても優しい甘い世界に身を置くことを決めたのだった。
ーー願わくば彼の新しい人生が、幸せなものでありますように。誰かのための人生ではなく、自分ための人生でありますようにーー
2013/6/5
2014/6/23 改稿
☆書き溜めて置いた、ザックス復活話のうちの一本です。