ティファ曰く、俺はキス魔らしい。確かに言われてみればティファに限らず、マリンやデンゼルやユフィにまでしている。勿論、挨拶程度の軽いものだけど。
特にアルコールが入るとやばいらしい。
ティファにも「クラウドのそういうところ、女の子は勘違いするわよ。」と釘を刺されるぐらいだ。
その日は、仕事で凄く嫌な事があって気分が最悪だった。こういう日は酒でも煽って寝てしまうに限る。
セブンスヘブンに帰り、いつものカウンターに腰掛けると、隣に黒いコートらしきをものを身につけた男が座っていた。
「見かけない客だな」とは思ったが、気にせずにティファに何時もより強目の酒を注文した。
ジェノバ細胞を植え付けられたこの身体、いくらアルコールを摂取しても酔えない。
店で一番アルコール度数が強いものを飲み始めて10杯目、流石に飲み過ぎだと感じたのか、ティファが止めに入った。
「クラウド、大丈夫?少し飲み過ぎじゃない?もうやめた方がいいわよ。」
俺はその忠告にも耳を貸さず、出されたそれを一気に煽った。
酔えない…。と、思っていたんだ。
いつのまにか店も閉店していて、仕方が無いかと、そろそろ寝ようと立ち上がった時、地が揺れるような感覚に襲われた。
俺は足元もおぼつかず、ふらついたが倒れないように必死に食いとどまった。
しかし、それは無駄に終わったらしい。立てなくなった俺を隣に座ってた男が支えてくれた。
「あっ、すまない」
彼は「いいや?」と首を横に振る。そして、その男の目を見た瞬間、俺の中に眠っていた何かが突然目覚めた。
まるで電流が体内を流れた、そうサンダーを食らった時のように。
「その目は…嘘…だ…どうして?」
俺はそいつの唇にまるで吸い込まれるように、自分の唇を押し付けた。そしてそれは深いものに変わって行った。
「クラウド!ちょっとあなた何してるのよ!」
ティファが焦った様に叫ぶ。でも、俺はその唇の誘惑に逆らうことが出来なかった。
しかし、物事には限度というものがある。俺は呼吸が苦しくなってきて、離してくれと男の胸を叩いた。しかし、男は離す気配がない。
「い…いい加減に…しろっ!」
俺はその男を思いっきり突き倒した。悔しいことにそいつは少し動いただけだったが。
ティファが心配そうにこちらを見ている。
「あんたは、いつもやり過ぎなんだよ…なあ、どうして?あんたはあの時…俺をかばって…」
「それ以上言うな。つーか、お前相変わらず酒癖悪いのな?あれ程気をつけろと言い聞かせてたのにさ、相手が俺じゃなかったらどうするんだ?」
「あんただからしたんだ。あんたじゃなければ…こんな事しないよ、ザックス。」
「久しぶりだな、クラウド。よかった無事に生き延びていたんだな。」
俺は人前だと言うのに、子どものように泣きじゃくっていた。それをザックスは優しくなだめてくれる。
ティファは、何があったのか全く分からず困惑の表情で固まっていた。
「悪いけど、こいつ借りてくな?マスター。」
「えっ?ど、どこに連れて行くのよ!っていうか、あなた誰なの?」
「俺?俺はザックス・フェア。こいつの恋人だ。」
なにキメ顔で恥ずかしいこと言ってんだよ…。俺は酔った振りをしてザックスに抱きついていた。