ザックスside
屋敷内が慌ただしい。今日朝からずっとそうだ。あれからずっと俺の側を離れる事がないジュリーの元にも、お付きの女中達が入れ替わり立ち代わり騒々しい。
「なあジュリー、今日はなんか煩くね?」
ジュリーは、俺の髪を優しく撫でながら小さく笑いながら言った。
「今晩、マッドと私の結婚発表のパーティを開くそうよ。」
「はあ!?何で!」
「マッド、あなたお父様と約束をしたじゃない?今日中に返答しないとって。」
「あれ本気かよ!」
「私は反対だけどね。そんな脅迫じみた事であなたを縛りたくないし、それじゃこのお腹の子が可哀想だわ…。」
「あっ!ほら、触ってみて?」
ジュリーが俺の手を無理やり自分の少し膨らみが目立つようになってきた腹に当てるように持っていった。すると、ピクッと何かが跳ねるような振動が手のひらに感じた。
「えっ?う、動いた!」
「最近、動くようになってきたのよ。周りはこんなに慌ただしいのに、この子は一生懸命生きてるの。」
そう言って愛しげに腹を撫でていた。
ジュリーは、振動を感じた手のひらを見つめたまま動けなかった俺の肩に額をくっつける形で、顔を寄せて問いた。
「あなたがクラウドさんを大切に思って愛している事は、嫌っていうほどここ何ヶ月でわかったの。」
「うん。」
「でも、私もあなたを愛してる!そして、このお腹の子にもあなたが必要なの。」
「そ、それは…。」
「あなたがクラウドさんを一番に思っていても構わない。でも、あなたをあの人の元に帰すわけにはいかないの!この子を、何の罪もないこの子を一人にしないで!ううん、私があなたと離れたくない!!」
「ジュリー…。」
「マッド、あなたの本心が聞きたいわ。」
俺がいま、ここを出て行くとこの腹の子は父親のいない子になってしまうのか?
それは男としてどうなんだ?
確かにあの日、媚薬を入れられた酒を飲んで不可抗力でジュリーに手を出した。
でも、それでも自分の意思が強ければ最後まではいかなくてすんだんだ。
そしてこの子には何の罪もない…。それに俺があいつを諦めればあいつは神羅の手に再び堕ちることはないんだ。
二度も裏切った俺が今あいつに出来る事は、これしかない。
俺はジュリーを優しく抱きしめ、耳元で囁くように懇願した。
「あいつに、クラウドには絶対手を出さないと誓ってくれるか?」
「…うん。あなたが私の元にいてくれるのならばね。」
「わかった。俺はこの子の正式な父親になる。ジュリーと結婚するよ。」
「本当…に?嬉しい!」
「ああ。」
2013/5/3
<>Ring of promise 20 タークスside