案の定、長い間待たされたからか、かなり不機嫌になってしまったジュリーのご機嫌伺いをして、屋敷に戻った。
クラウドの方は、護衛の依頼は受けていないからと、宿屋を探すため別行動だ。
今日の成果を聞きたがるジュリーに、掻い摘んで話してやった。
「名前、思い出したんだ。」
「ああ。」
「なんて言うの?あなたの本当の名前。」
「ザックス、ザックス・フェア。クラウドによると、名前の通り能天気な性格だったらしい。」
「クラウド?何でも屋さん?」
ジュリーが手渡してくれた、キンキンに冷えたビールを開けながら俺は答えた。
「そう。思ったとおり、あいつは俺の昔馴染みだったよ。助かった…これで俺の過去が戻ってくる。」
ジュリーは、自分もビール片手にソファーの俺の隣に座った。
「ただ…」
「ん?ただ?」
「少し離れたところに、エッジを望める丘があるだろ?あそこに大きな剣が刺してあって…それに触ったらあいつ凄く取り乱した。」
「あんな冷静ぽい人が?」
「大切な人の…恋人の形見だって言ってた。あいつ、目に一杯涙を溜めて…。」
その夜、不思議な夢を見た。
戦場だろうか?黒い服を着た男に、容赦無く弾丸が打ち込まれる。
その男に、足腰立たない少年が這いつくばって近寄ってくる。
撃たれて倒れている男に近づいてみる。これは!!
俺だーー
そして、なげなしの力を使って這いよってくる少年の顔をみようとしたところで目が覚めた。
「なんだ?なんなんだよ!これ!」
飛び起きると着ているシャツは汗だらけだ。
汗で張り付いたシャツを脱ぎ捨てて、シャワーを浴びにいった。
コックを捻って熱いお湯を身体に浴びせる。
バスルームの壁に両手をつき、頭からシャワーを浴び、見た夢を思い出してみる。
あの戦場で撃たれて倒れていたのは間違いなく俺だった。
見た事のない服を着ていたが、あれが所謂ソルジャー服というものなんだろうか?
俺に必死に這いつくばって近寄っていた少年兵は一体誰なんだ?
もう少しで顔が見えたのに!!
「マッド?タオルここにおいておくね。」
「ああ、ありがとう。」
身体をタオルで拭きながら改めて自分の身体を鏡に写してみる。
身体中にある傷ー
これは弾痕だったんだな。特に左胸に集中している。
たった一人にあれ程の兵士を差し向けるとは…俺、一体何したんだ?
あの少年兵は大丈夫だったんだろうか?足腰が全く立たなかったみたいだったが。
「考えてもしようがない。明日、クラウドに聞いてみるか。」
俺は手早く着替えて、ベッドに向かった。
ベッドでは、ジュリーが既に眠りについていた。
そういえば、今日は一度も彼女に触れていなかったな。
やはり、俺が記憶を思い出すという事は、彼女との関係もかなり変わるということなんだろうな。
「ごめんな。」
そう呟いて俺はジュリーのベッドには入らずに、隣のベッドに横になった。
2013/4/26
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