「ここだと誰にも邪魔されないからさ。思い存分語り合えるぜ?」
そういって黒い瞳を俺に向けて来た。
「なあ、何でも屋さん。クラウドって言ったか?正直に話してくれよ?あんた、俺の事もしかして知ってるんじゃねえのか?」
「あんたの事は知らない。これは本当だ。でも、あんたによく似た男を知っている。」
「よく似た?」
「ああ。本当に似ている。まるで生き写しだ。初めてあった時、そいつだと思ったんだ。でも、そんな訳がないとすぐ吹っ切ったけどな。」
「なんで?」
「俺の知っている奴は、俺を庇って死んだんだ。」
「俺なんかほっておけば良かったのに、あいつお人好しだからずっと俺の事護ってくれて…。そして、何百人という神羅兵に囲まれて死んだ。この場所でーー。」
「えっ?」
「俺の話はいいから、今後のためにあんたの話を聞かせてくれ。」
「ああ…俺は何年も前に…ジュリーの親にぶったおれていたところを拾われたんだ。ーーこの丘で。」
「……」
「で、ジュリーの家に拾われてさ、それからずっとそのまま。あの家も星を巡る戦いの前までは、カームでも数少ない資産家だったらしいが、なんせ何もかもなくなったろ?どこもそうだが、その日暮らすのも大変らしい。なのに俺の面倒を見てくれたわけだ。本当に感謝しても足りないくらいだ。」
「…さっきジュリーさんが話していたけれど、結婚するのか?」
「…多分な。」
「多分って。」
「だってよ、本当の自分が何者かわからないのに、そんな気にはならないだろう?」
「……」
俺はなんと答えればいいのだろうか?このマッドがあいつではないのは、自分が一番よくわかっているはずなのに、どうしても重ねて見てしまう。
ダメだ、これは仕事なのに…。こんなに私情を挟む様では、任務が遂行出来やしない。
やっぱり断ろう。
「マッド!」
「ん?なに?」
「…すまない。やはりこの依頼は俺には荷が重いみたいだ。申し訳ないがキャンセルさせてもらえないだろうか?」
マッドは、一瞬目を見開きすぐに今度は目を細めて俺に言い放った。
「一度受けた仕事だろ?」
「それはそうなんだが…。」
「あんたの事情はよくはわからないが、俺もこれが最後のチャンスなんだ。」
「…最後の?」
「俺、記憶を戻すためにいろんな手を使った。で、残されたのがあんたに依頼することだけだった。」
「どうして?記憶なんて取り戻さないで、新しい自分をスタートさせればいいんじゃないのか?」
「それじゃダメなんだ!!」
怒ったマッドは、急に立ち上がり側にあった墓標代りのバスターソードを握りしめ引っこ抜いた。
バスターソードはかなり重量があり、一般人がやすやすと持ち上げられる代物ではない。それも前にカタージュ達に蹴り飛ばされ抜けたので、抜けない様に俺が力を込めて地面に差し込んだのだ。
なのに、この男は簡単に地面から抜き取り軽々と担ぎ上げた。
俺は驚き言葉を失ってしまった。
我に返り、大切なバスターソードを"関係のない"男に扱われたことに苛立ちを覚え、俺はマッドに食ってかかった。
「返せ!それはお前が触っていいものじゃない!」
「この剣がそんなに大切か?」
「お願いだ!返してくれ!それは…俺の大切な…恋人だった奴の形見なんだ…。」
マッドは、俺の剣幕に驚いたのかバスターソードを元の場所に戻して、俺の肩を掴んで訴えた。
「す、すまない。そんな大切なものだったなんて…。知らなかったんだ。頼むから…泣くのはやめてくれよ。」
「えっ?俺、泣いてるのか?」
「クラウド、気がついていないのか?」
「でも、これでお前もわかるだろう?俺もはっきりさせたいんだ。自分の過去も、ジュリーとの事も。だから、お願いだ!協力してくれ!」
「俺には何も出来ない。」
「いや、出来る!俺の勘なんだが、クラウドは俺と知り合いなのは間違いないはずだ。」
「何を根拠に…」
「元々、ジュリーと…んー…そのー事に及んでいる最中…」
「事?」
なんだか照れながら話すマッドが可愛くなって、これ以上からかうのはやめてやろう。
「SEXか。」
「お、お前!そんなズバッと!そんな可愛い顔でそんな発言っ!」
「誰が可愛いって?」
冷ややかな眼で少しにらんでやったら、焦り始めたのが可笑しくて。
「まあいい。で、話の続きだ。」
「で、事に及んでいる最中、最近ズキンと頭が痛む事があるんだ。これはジュリーには話していないけど、ほぼ毎回。俺の記憶の扉が開きかかっている時に、そういう痛みを味わうのは経験済みだ。」
「で、クラウドと初めてあった時から、それ以外でも痛む事が増えて来て…。実は自分がソルジャーだったってところまでは思い出したんだ。」
俺はバスターソードを背もたれにして、へたへたと地面に座り込んだ。
今、こいつは何ていった?
ソルジャー"だった"?
「マッド…あんた、ソルジャーだったの…か?」
「ああ。ゴンガガからソルジャーを目指して出てきた。」
「ゴン…ガガ?」
「どうだ?これでも俺はお前の知り合いじゃないのか?」
俺は思いっきり首を降って否定の意を表した。
マッドはあいつだ。間違いない。でも…それを認めるという事は、彼の今の幸せを壊す事だ。どうしたらいい?俺の事を知らせないでどうやって説明したら…。
「なあ、クラウド。俺の名前を教えてくれ。」
「あ、あんたの名前は…ザックスだ。」
「ザックス?ザックスか。」
「ああ、ザックス・フェア。名前通り無駄に明るい奴だったよ。」
「無駄にって…お前も以外とキツイね。」
そんなの今更だ。しかし目の前のザックスはそんな事を覚えてはいない。
「まあ、今日は取り敢えず名前を思い出しただけいいとするか。また明日、何かを思い出すかもしれないからよろしくな?」
「俺に出来る?」
「お前じゃないとダメなんだよ。」
そういって立ち上がり、お尻の汚れをはたき落とし、あまり遅いとジュリーが煩いからと、二人で帰途についた。
2013/4/26
Ring of promise 5 ザックスside