俺は、パン屋の前に立ち陛下を手招いた。
「陛下、どうぞ」
「あ、ああ」
店主は、坊ちゃんに自分の店の説明をしていた。
「これが、最近一番の出来のパンです。」
「柑橘類の風味が効いていて、とても美味しいですよ。」
横から店主の奥方が声をかけてきた。坊ちゃんの視線が彼女のお腹に行くのがわかったのと同時に、彼女に声をかけた。
「奥さんはおめでたなの?大変だね。頑張って元気な赤ちゃんを産んでね。」
「そうだ!折角のお勧めパンを頂かないとね。」
坊ちゃんは、にっこり微笑んでパンを受け取り、俺に一口分ちぎって寄越した。
「彼にも一口おすそ分けしてもいい?」
と、気遣いの言葉をかけながら。毒味で知られると相手が嫌な気分になるのを避けたんだろうな。
そういうとこ、俺は好きですぜ。
「焼きたてだねぇ。美味しそうだ。」
年相応の顔をして、陛下はパンを頬張った。
「おいしい!オレンジかな?入っているの。甘酸っぱくて本当に美味しいよ。ねぇ、ヨザック」
「はい、本当に旨い。ここら辺じゃ味わえないパンですね。」
ふと、目をそらしてみると、店主夫婦が手を取り飛び上がって喜んでいた。あ、あまり飛び上がるとお腹の赤ちゃんが…。
俺がハラハラしてその様子を伺っていると、店主が陛下に声をかけていた。
「でも、陛下。そのパンのヒントをくれて作ったのは私達じゃないんです。」
店主夫人は、おずおずと話し始めた。
「実はうちの従業員が作ったんですよ。ですから、彼にもお褒めのお言葉を与えていただきたく…彼の励みにもなりますので」
店主は、店の方に向かって従業員を呼んだ。
「マルツ、こっちへ来てくれ」
「おかしいな、なにしてるんだ。」
店主は、店の奥に入って行き従業員に声をかけているらしい。
従業員は、このままじゃ店主に迷惑がかかると判断したのか、姿を現したー
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2011/11/10 juliwolfmun