6月6日(日)角の三等分/ポストコロナのSF | 塾長雑記帳

塾長雑記帳

盛岡市高松にある個人塾「石原学舎」塾長のブログです.
石原学舎の生徒さんの様子,チェロ,読書などの話題がメインです.

矢野健太郎「角の三等分」読了

 

一般向けの解説書。有名な不可能問題の一つについて、なんとなく雰囲気がわかるように解説している。前半が矢野健太郎氏による部分で、後半は一松信氏による、もう少し詳細な解説。前半において省略されていた証明が述べられている。

 

本論とは関係ないのであるが「角の三等分屋」という人種がいて困る、ということが書かれていて笑ってしまった。要するに、「角の三等分はできないと言われているが、自分はできることを証明した」と著者や出版社に連絡してくるアマチュア数学愛好家をどう扱うか、という話だ。どうやら、アメリカにもこの手の人々はいるらしく、彼らのあしらい方についての論文もあるんだとか。

角の三等分屋のような人々は、我々の世代であれば「相対論は間違っていた」系の人々を思い出すだろうし、もう少し最近であれば掲示板やSNSなどに張り付いて自説を説き続ける(そして他人の言葉には全く耳をかたむけない)頭のおかしい人々のことだろうと察することができる。いずれにしても、どこの国にもこのような頭のおかしい連中が一定数いるという事実は興味深い。普通に考えれば、自分の考えることくらい他の人も考えているだろうと想像できると思うのだが、誇大妄想に取り憑かれた人々はそうは思わないのだろう。

 

ちなみに、一時期「相対論は間違っている」系の本をやたらと出していた徳間書店は、塾長の中では有害出版社認定されていて、どんなに有名な作家の本であろうとも、徳間書店で出されている限りは買わないことにしている。そういえば、ジブリが徳間書店と組んでいるので、ある時期からはジブリの映画も見ないようにしている。誠実さのない企業の商品に金を出さないということは、結構大事なことだと思うのです。ワシだけがそれをやっても意味ないのはわかってますばい。

 

***

 

日本SF作家クラブ編「ポストコロナのSF」

 

SF作家などという狭そうなコミュニティ内に、さらに寄り合いのようなコミュニティがあるとは知らなんだ。

 

これは、20人くらいのSF作家の短編集。おもろいのもそうでないのもあったが、大体においてそれぞれの世界を楽しむことができた。ほとんどの作品は、感染症が永続的なものであるような世界を描いていて、確かにそのような世界になる可能性はあるようなあと思ったりもする。ちょっと前に比べて、ちょっとだけギャンブル要素が増えた世界になるのかもしれない。しかしまあ、二十一世紀になっても感染症を克服することができないとは、人類もまだまだよのう。ロックダウンすれば島国は大丈夫な気がするんだけど、それはあかんのかね。

 

各短編の前に、誰が書いたのか知らんが前口上みたいなのがあって、これは邪魔だった。小説を読む楽しみは、ゼロから設定を読み解くことにある。「これから描かれる世界はこんな感じですよ」みたいな説明があると、すんごくつまんないんですけど。