すべて重荷を負って苦労している者は、私のもとに来なさい。あなたがたを休ませてあげよう。私は柔和で心のへりくだった者だから、私の軛(くびき)を負い、私に学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に安らぎが得られる。私の軛は負いやすく、私の荷は軽いからである。

(マタイによる福音書・11章28~30節・聖書協会共同訳)

 

 これは、キリスト教の聖書の中で、イエス=キリストが人々に呼びかけた言葉です。

 

 前回、「共軛(きょうやく)な複素数」についてご説明しました。

 数学の世界の中には複素数というものが存在し、例えば2+3iと2-3iのようにペアになる1組の複素数のことを共軛な複素数と言います、「共役」ではなくて「共軛」です、というお話でした。

 では、「軛(くびき)」とは何か?

 世界史の資料集の中にちょうどおあつらえ向きのイラストを見つけました。

 

『ニューステージ世界史詳覧』

(浜島書店)2012年版より。

 

 この、畑で働かされている2頭の馬の描(えが)かれている真ん中のイラストを見てください。

 彼らを首のところでつないでいる木の道具が「軛(くびき)」です。

 1頭の馬では力が弱いので、2頭の馬を軛でつなぎ、畑を耕すための重たい犂(すき 土を掘り起こす鉄でできた農具)を引かせています。

 「軛(くびき)」はもともと、「首に付ける木」という意味であろうと思われます。

 

 ここで再び「共軛な複素数」に戻ってみます。

 2+3iと2-3iを

 

  2+3i

  2-3i

 

のように縦に並べて書くと、いかにも2頭の馬を軛(くびき)でつないでいるように見えてきて、なんだかかわいくなってきます。

 

 冒頭に載せた聖書箇所の中で、イエスはわたしたちに「わたしと軛(くびき)でつながれなさい。」と呼びかけています。

 世界史資料集の中の馬たちは、鞭(むち)でたたかれて、なんだかこき使われているようですが、イエスは違います。

「わたしとともに軛でつながれて、一緒に働こう!」

と、わたしたちを招いておられます。

「そうすれば、あなたの荷は軽くなる。」

と。

 

 次回では、「イエスとともに働く」ということについて、もう少し考えを深めたいと思います。

 (この聖書箇所については、この他にもいくつかの解釈があります。)