しばらくしてから「自分」と妻も部屋を出て、宿の主人のKさんと「年を取った炭焼きの春さん」が、志賀夫婦が住むための離れの小屋を建てているのを見に行きます。

 

「割に気持のいい物になりました」とKさんが云った。自分も手伝った。妻も時々手を出した。

 

 この小屋の壁は木炭でできているので、早く柵を作って囲わなければ牛や馬が登ってきて食べてしまう、と春さんが言います。

 

「牛や馬にはこの家は御馳走だからね」と春さんは笑いもせずに云った。皆は笑った。

 

 牛や馬って炭を食べるんでしょうか? なんだかおかしい。

 体を動かして働いたあとの夕暮れは、とても美しくて気持ちがいい。

 そう言えば、きのうもそんな夕暮れだったな…と「自分」は思い出す…。