弁償算 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

つるかめ算のうちマイナスが発生する条件がついているものは一般に弁償算と呼ばれています。

いくつかある弁償算の解法のうち応用がきく一つ(ぜんぶを底上げするという考え方)を今回ご紹介します。

 

  その1(立正大学付属立正2023第3回)

 

ある商品を200個運ぶのに、運賃として1個につき65円もらえますが、これをこわしてしまうと運賃をもらえないだけでなく、1個につき420円を支払わなければなりません。この商品を運び終わったあと、運賃として10090円もらったとすると何個こわしてしまったでしょうか。

 

右矢印 いま問題文にある条件は「①うまく運べたら65円もらえる。②こわしたら420円支払う」というもの。これをつるかめ算の面積図で解こうとすると変な形になってしまい、いつもの解き方ができない。

 

そこで問題文にある条件を少し変えてすべて420円ずつ上げることとして

 ❶うまく運べたら485円もらえる

 ❷こわしても何もおきない(0円支払う)

と読みかえる。

 

これにより「運賃として10090円もらった」は「運賃として94090円もらった」と読みかえることになる(200個ぜんぶ420円ずつ上げるので420×200+10090=94090より)

こうすることで、面積図にすると上の図の左のようになっていたものが、右のようにすっきりした図になる。

 

よって94090÷65=194よりうまく運べたのは194個だからこわしたのは

 200-194=6個 

 

 

この考え方は次のような少し複雑な問題でとくに有効です。

 

  その2(東京女学館2023第2回)

 

AさんとBさんは階段の途中の同じ場所に立っています。2人は次のルールにしたがって、階段を上り下りすることにしました。ただし、どちらかー人が勝ち続けても、負け続けても、階段の途中にいるものとします。

<ルール>
じゃんけんをして、勝った人は3段上がり、負けた人は2段下がります。あいこの場合は、2人とも1段ずつ上がります。

このとき、次の各問いに答えなさい。
⑴ じゃんけんを5回したところ、あいこは1回もなく、AさんはBさんよりも5段上にいました。このとき、AさんがBさんに勝った回数を求めなさい。

 

右矢印勝った人は3段上がり、負けた人は2段下が」るから(「あいこは1回も」なかったから)1回のじゃんけんで5段の差がつく。

ということはAさんがBさんより1回だけ多く勝つことで「AさんはBさんよりも5段上に」いることになる。

よって「じゃんけんを5回した」場合にそうなるにはAさんが3回、Bさんが2回勝てばよいからAさんが勝った回数は 3回

 

⑵ じゃんけんを12回したところ、Bさんははじめの位置に戻っていました。このとき、BさんがAさんに負けた回数として考えられる回数を2つ求めなさい。


右矢印 あいこがあると対応が面倒になるので問題文を読みかえて対応する。

 

いま問題文にある条件は「①勝ったら3段上がる。②負けたら2段下がる。③あいこなら2人とも1段ずつ上がる」というもの。

これをすべて1段ずつ下げることとして

 ❶勝ったら2段上がる

 ❷負けたら3段下がる

   ❸あいこならそのまま(0段上がる)

と読みかえる(こうして❸は考えなくてもよくなる)

 

これにより「Bさんははじめの位置に戻った」→「Bさんは12段下がった」(12回ぜんぶ1段ずつ下げるので)と読みかえることとなる。

このとき12回のじゃんけんでBさんが12段下がるような勝ち負けを考えると

  1. ❷負けが4回(これで12段下がる)と❶勝ちが0回(残り8回は自動的に❸あいこに決まる)か
  2. ❷負けが6回(これで18段下がる)と❶勝ちが3回(これで6段上がる)(残り3回は❸あいこ)か
のどちらかしかない。
 
よってBさんがAさんに負けた回数は
4回か6回

 

⑶ じゃんけんを19回したところ、はじめの位置よりも、Aさんは28段上に、Bさんは2段下にいました。このとき、AさんはBさんに何回勝って、何回負けて、何回あいこだったか求めなさい。

 

右矢印 これも問題文にある条件をすべて1段ずつ下げることとして

 ❶勝ったら2段上がる

 ❷負けたら3段下がる

   ❸あいこならそのまま

と読みかえて考える(これなら❸あいこは考えなくてよくなる)

 

これにより「Aさんは28段上に、Bさんは2段下にいた」→「Aさんは9段上に、Bさんは21段下にいた」(19回ぜんぶ1段ずつ下げるので)と読みかえることとなる。

このとき19回のじゃんけんでBさんが21段下にいるような勝ち負けを考えると

  1. ❷負けが7回(これで21段下がる)と❶勝ちが0回(残り12回は自動的に❸あいこに決まる)のとき…このときAさん(7回勝って0回負けた)は 2×7=14段上にいることになるが、実際のAさんの場所は9段上だからこれだと条件に合わない。
  2. ❷負けが8回(これで24段下がる)だと21段下になることはなく条件に合わない。
  3. ❷負けが9回(これで27段下がる)と❶勝ちが3回(残り7回は❸あいこ)のとき…このときAさん(9回勝って3回負けた)は 2×9-3×3=9段上にいることになりうまく条件に合う(これ以外に条件に合う勝ち負けはない)
よってAさんは勝ちが9回、負けが3回、あいこが7回 完了