電車の旅人算 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

問題文に電車(列車)が出てくるとだいたいは通過算の問題でしょうが、なかにはたんなる旅人算(車両の長さは出てこない)の問題というものもあります。

そういう電車の旅人算の例として次のような問題が今年出されています。

 

  その1(帝塚山学院中2023)

 

急行列車はA駅を、特急列車はB駅を、いずれも9時に出発し、その後は2つの駅の間を一定の速さで往復し続けます。下のグラフは、急行列車と特急列車の1時間の運行のようすを表したものです。

①急行列車と特急列車の速さの比を、最も簡単な整数の比で答えなさい。

 

右矢印 グラフより9時から10時までに急行列車は1.5往復、特急列車は2.5往復する。とすると走る距離の比は1.5:2.5=3:5

よって距離は速さに比例するから急行列車と特急列車の速さの比も 3:5

 

②グラフの(ア)にあてはまる時刻は、何時何分何秒ですか。

 

右矢印 AB間の距離を①kmとすると

  1. 急行列車(1時間で1.5往復する)の速さは時速③km、特急列車(1時間で2.5往復する)の速さは時速⑤km
  2. (ア)から10時までの間に特急列車と急行列車はあわせて①kmの距離を走る。これにかかる時間は ①÷(③+⑤)=0.125時間=7分30秒

よって(ア)は10時の7分30秒前なので9時52分30秒

 

 

  その2(啓明学園2023)

 

明くんは、A駅とB駅の間で特急くじらと特急つつじの電車がすれ違う写真を撮るために、電車の発車、到着の時間や駅間の距離を調べています。A駅とB駅の距離は、6.4kmで、特急くじらはA駅を9時3分20秒に発車し、B駅に9時8分30秒に到着します。特急つつじはB駅を9時4分20秒に発車し、A駅に9時9分30秒に到着します。どちらの電車も、駅を発車してから30秒間加速しながら200m進んだ後、一定の速度で走ります。また、駅の手前で30秒間減速し、200m進んだ後停止します。
⑴ 特急くじらが一定の速度で走っているときの速さは秒速何mですか。

 

右矢印 特急くじらが「一定の速度で走っている」時間と距離を考えると

  • 特急くじらはA駅を9時3分20秒に発車し、B駅に9時8分30秒に到着」するからAB間を5分10秒で走る。このうち「駅を発車してから30秒間加速」し「駅の手前で30秒間減速」するから一定の速度で走っている時間は4分10秒(=5分10秒-30秒×2)
  • A駅とB駅の距離は「6.4km」だが、加速と減速のあとそれぞれ「200m」ずつ進むから、一定の速度で走っている距離は6km(=6.4-0.2×2)

よって特急くじらが一定の速度で走っているときの速さは

 6km÷4分10秒=6000m÷250秒=秒速24m

 

⑵ 特急くじらと特急つつじがすれ違うのは、駅Aから何m離れた地点ですか。

 

右矢印 特急つつじが一定の速度で走っているときの速さをまず考える。

特急つつじはB駅を9時4分20秒に発車し、A駅に9時9分30秒に到着」するからAB間を5分10秒で走る。これは特急くじらと同じ。加速や減速のしかたも特急くじらと同じだから特急つつじの速さも秒速24m

 

とするともし同じ時間に出発するとしたらすれ違うのはちょうど真ん中の3200m地点。だが実際には特急くじらの方が1分早く出発するから特急くじらの方が 24×60=1440m だけ多く進んだところですれ違う(このように距離だけで考えるとき最初の30秒間200mの加速はどちらも同じ条件なので無視できる)

 

 

よってすれ違うまでに進む距離を考えると

  • 特急つつじは(6400-1440)÷2=2480m
  • 特急くじらは 2480+1440=3920m

だからすれ違うのはA駅から 3920m 地点

 

 

  その3(筑波大学附属2023)

 

ある路線では、A駅からD駅へ向かう線路が2本あり、普通列車と特急列車がそれぞれの線路を一定の速さで走っています。普通列車は、8時15分にA駅を出発し、B駅、C駅にそれぞれ1分30秒ずつ停車してD駅に到着します。特急列車は、普通列車より遅くA駅を出発し、B駅、C駅には停車せず、普通列車よりも早く D駅に到着します。このとき、普通列車がA駅を出発してからの時間と各列車とA駅との距離の関係は、下の図のようになります。特急列車が時速120kmで進むとき、後の各問いに答えなさい。

⑴ 普通列車がC駅を出発して30秒後に特急列車は普通列車に追いつきました。このとき、特急列車がA駅を出発した時間は何時何分何秒ですか。

 

右矢印 特急列車に追いつかれるまでに普通列車が走った距離と追いつかれた時間をグラフを使いながら求めると

  1. 普通列車はA駅からB駅まで5.6kmの距離を4分で進んだ。その速さは 5.6÷4=分速1.4km
  2. この速さでいくとB駅とC駅の間は 9.1-5.6=3.5km離れているから 3.5÷1.4=2.5分=2分30秒かかる
  3. とすると「C駅を出発して30秒後に」特急列車に追いつかれたから追いつかれるまでに普通列車が走った時間はぜんぶで 4分+2分30秒+30秒=7分。これは距離にすると 1.4×7=9.8km
  4. また「8時15分にA駅を出発」した普通列車は「B駅、C駅にそれぞれ1分30秒ずつ停車」したから実際に追いつかれた時間は 8時15分+7分+1分30秒×2=8時25分

これに対して特急列車は「時速120km」=分速2kmだから同じ9.8kmの距離を走るのに 9.8÷2=4.9分=4分54秒 かかる

 

よって特急列車がA駅を出発した時間は

 8時25分-4分54秒= 8時20分6秒

 

⑵ 特急列車がD駅に到着した3分後に普通列車がD駅に到着しました。このとき、A駅からD駅までの距離は何kmですか。

 

右矢印 特急列車と普通列車の分速の比は 2km:1.4km=10:7。とするとかかる時間の比は速さの逆比だから特急:普通=⑦:⑩。

この差③が3分だから①=1分。

とすると追いついてからD駅に着くまでに特急列車で7分かかる。

 

よってA駅からD駅まで特急列車で 4分54秒+7分=11分54秒=11.9分 かかるからその距離は

 分速2km×11.9分=23.8km 完了