面積を二等分する線(加比の理③) | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

比には「同じ比どうし足しても引いても比はかわらない」という当たり前だが忘れがちな性質があります。加比の理(かひのり)と呼ばれるものですが「面積を二等分する線」の図形問題ではこれを使うことになります。

たとえば今年の出題例で次のようなものがあります。

 

  その1(白陵中2023)

 

図形の面積を2等分する直線の引き方を考えます。例えば、図1の長方形では、図2のように2本の対角線を補助線として、それらの交点を通る直線が求める直線になります。この場合は、直線の引き方が何通りもあります。
図3の図形で、面積を2等分する直線の引き方を3通り表しなさい。必要な補助線は点線で示しなさい。

 

右矢印 点対称な図形の場合、対称の中心を通る直線を引くとその両側の面積は等しい。長方形は点対称な図形だから、図1の長方形に図2のように2本の対角線の交点(点対称の中心)を通るように直線を引くとその面積は2等分される(ここまでは問題文にある通り)。

 

そして同じ比どうしを足しても引いても比はかわらない(加比の理)。たとえば大きい長方形を1:1に分け、小さい長方形を1:1に分けたとき、分けた半分どうし足したり引いたりしてもやはり1:1となる。

 

よって、図3の図形を長方形2つに分けてその対称の中心である対角線の交点どうしを直線で結ぶことを考えると「面積を2等分する直線の引き方」は次の3通り(下図は学校発表の模範解答

 

*加比の理のうち「同じ比どうし足しても比はかわらない」ことを利用したものが上の2つ、「同じ比どうし引いても比はかわらない」ことを利用したものが下の1つということになります。

 

  その2(湘南白百合2023)

 

次の図形は合同ではない2つの長方形を組み合わせた図形です。この図形は長方形のもつある特ちょうのため、図形の各辺の長さがわからなくても一本の直線で面積を2等分することができます。

⑴ 次の選択肢の中から長方形の特ちょうとして当てはまらないものを1つ記号で選びなさい。
【選択肢】
  ① 線対称な図形
  ② 2つの対角線の長さが等しい
  ③ 2つの対角線が90度で交わる
  ④ 点対称な図形
  ⑤ すべての内角の大きさが90度

 

 

右矢印 (これは正方形やひし形の特徴)

面積を二等分する線の問題で多くの場合にポイントとなるのは④(点対称な図形)の特徴

 

⑵ 上の図形の面積を2等分する直線を一本書きなさい。また、その直線がなぜ面積を2等分するのかを詳しく説明しなさい。ただし、説明する際には図などを用いてもかまいません。面積を2等分する直線を書くために使った(書いた)補助線は消さずに残しておきなさい。

 

右矢印 たとえばその1の左上の図。

なぜ面積を2等分するのかを詳しく説明」するとしたらたとえば次のようなものが考えられます。

 

点対称な図形の場合、対称の中心を通る直線を引くとその両側の面積は等しくなる。上の図形は点対称ではないので、まずはこれを点対称な図形である長方形2つに分ける。

すると長方形では2本の対角線の交わる点が点対称の中心だから、こうしてできた2つの長方形の対角線の交点どうしを結ぶとどちらの長方形も2等分される。そして等しいものどうしを足した面積もまた等しい。

よって、この直線が上の図形の面積を2等分する直線となる。完了