以前の記事の続きです。
水道から水が出るタイプの水そう問題は頻出ですが、そこまでではないとしても水道を使わない水の深さの問題もよく出されます。
今年の入試問題だと次のような出題例があります。
ふたのない容器の水の深さ(鷗友2023第2回)
図1のように、ふたのない透明な直方体の容器に水が入っています。
⑴ 図2のようになるまで容器を傾けると、容器から水が576㎤だけこぼれました。図1の水の深さは何cmでしたか。答えを出すために必要な式、図、考え方なども書きなさい。
△BEFを底面とする三角柱とみて図2の水の体積を求めると
BF×EF÷2×BC=14×16÷2×12=1344㎤
これにこぼれた水の体積576㎤を足して図1の水の体積は1920㎤とわかる。
よってこれを図1の底面積192㎠(=16×12)で割ったものが図1の水の深さなので
1920÷192=10㎝
⑵ さらに、図3のように、FP、GQの長さが9cmになるまで容器を傾けました。このとき、こぼれた水は何㎤ですか。答えを出すために必要な式、図、考え方なども書きなさい。
△BPFを底面とする三角柱とみて図3の水の体積を求めると
BF×PF÷2×BC=14×9÷2×12=756㎤
よって図2の水の体積1344㎤からこれを引いた588㎤の水がこぼれた
密閉された容器の水の深さ①(本郷中2023)
右の図のような密閉された三角柱の容器に水を入れ、水平な床に長方形の面が底面になるように置いたところ、水の深さは6cmになりました。この容器の置き方を変えて三角形の面が底面になるようにします。このとき、水の深さは何cmになりますか。
密閉された容器では空気の部分の体積も変わらないことを利用すると
❶空気部分は赤の直角三角形(タテ9㎝)を底面とする高さ15㎝の三角柱とみることができる。そしてこの三角形は黒の直角三角形(タテ15㎝)と相似(相似比は9:15=3:5)
❷容器の置き方を変えると空気部分は黒の直角三角形を底面とする三角柱に変わる
❸赤と黒の直角三角形は辺の比3:5なので底面積の比は9:25(=3×3:5×5)。とすると空気の高さの比はその逆比で㉕:⑨
したがってもとの空気の高さ15㎝が㉕だから置き方を変えた後の空気の高さ⑨は15÷25×9=5.4㎝
よって置き方を変えた後の水の深さは
15-5.4=9.6㎝
密閉された容器の水の深さ②(南山女子2023)
すべての辺の長さが整数である直方体の容器があります。これに 360㎤の水が入っていて、ある面を底面にしたときの水の高さは12cm、別の面を底面にしたときの水の高さは9cmでした。この容器の容積は最も小さくて何㎤ですか。ただし、辺の長さの単位はcmとします。
問題文にある条件を整理すると
- 「360㎤の水が入っていて、ある面を底面にしたときの水の高さは12cm」だから360÷12=30より底面積30㎠の面がある
- また「別の面を底面にしたときの水の高さは9cm」だから360÷9=40より底面積40㎠の面がある
- 「直方体の容器」なので6面あるうち1.と2.の面がそれぞれ2面ずつあるから展開図を書いてみると「すべての辺の長さが整数」より青の辺の長さ(cm)は30と40の公約数だとわかる
とすると青の長さは1㎝、2㎝、5㎝、10㎝のどれか。場合分けをして条件に合うものをさがすと
❶1㎝の場合…上下の面はタテが30㎝(=30㎠÷1㎝)、横が40㎝(=40㎠÷1㎝)となる。この容器の体積(容積)は30×40×1=1200㎤
❷2㎝の場合…上下の面はタテ15㎝、横20㎝となる。この容積は15×20×2=600㎤
❸5㎝の場合…上下の面はタテ6㎝、横8㎝となる。しかしこの場合、問題文にある水の高さ12㎝になることはないから条件に合わない
❹10㎝のとき…上下の面はタテ3㎝、横4㎝となるが❸と同じく条件に合わない
よって条件に合う❶❷のうち小さい方の600㎤