以前の記事の続きです。
選挙で当選するには何票をとればよいかという問題(投票算などとよばれる)があります。
そのまま出すのでは簡単すぎるため、投票の途中の状況を示して「あと何票とれば当選確実か」という形で出されることが多くなっています。
たとえば次の問題。
その1(雲雀丘2023午後)
ある学年で委員を決めるために選挙をしました。委員の定員は3名ですが候補者が5名おり、右の表は一部を開票した結果です。
⑴ この時点で当選が確実であるのはだれですか。該当する人をすべて答え、またその理由を説明しなさい。
「委員の定員は3名」だから当選するには3位以内に入らないといけない。
未開票があと15票あるのでこれが誰か1人にぜんぶ入るという極端な例を考えてみると
- ぜんぶEに入ったときEは29票になるが3位のC(31票)には届かない→このとき当選するのはA、B、C
- ぜんぶDに入ったときDは36票になり3位になる→当選するのはA、B、D
- ぜんぶC、B、Aの誰かに入ったときは(上位3人の順位が変わることはあるが)当選するのはA、B、Cで決まり
ここから分かるのは、C(31票)はまだ4位に落ちる可能性もあるが、A(52票)とB(40票)は4位以下に落ちることはない。
よってこの時点で当選が確実なのはAとB
⑵ あと何票とれば、Aは単独1位で当選できますか。
Aが単独1位で当選するには、未開票の15票のうちAがとった票の残りぜんぶを誰か1人がとったとしてもその人に負けないだけの得票をすればよい。その逆転1位を取る可能性がいまいちばん高いのは2位にいるBなのでAとBの争いだけを考える(Bにさえ勝てばCDEにも必ず勝てる)
そのB(40票)がA(52票)に追いつくには少なくともあと12票とることが必要だからBがまず12票をとる(AとBが得票数52票で並ぶ)ことを考える。このとき(未開票15票だったので)残り3票となり、この3票の取り合いになる。
この残り3票のうち半分を超える2票をとればAは必ずBに勝てるから、Aの単独1位当選に必要なのはあと2票
⑶ Dが確実に当選するためには、少なくともあと何票とらなければなりませんか。
小問⑵で見たように投票途中の時点で確実に当選する状況を見つけるにはいったん同じ票数にそろえることがポイントとなります。
いま4位のD(21票)が確実に当選するにはいま3位のC(31票)を得票数で上回らないといけない
- それにはまずC(31票)と得票数が横並びになるよう、D(21票)は少なくともあと10票を取ることが必要→このとき(未開票15票だったから)残りあと5票
- さらにDはこの残り5票のうち半分を超える3票を取ることができれば必ずCに勝つ
よってDが確実に当選するには少なくともあと13票をとらなければいけない。
その2(神奈川大学附属2023第2日)
ある中学校の全校生徒数は336人です。1人1票ずつ投票して、立候補者A〜Fの6人の中から4人の生徒会の役員を選ぶ選挙を行います。ただし、獲得した投票数が同じ候補者がいて、4人を選びきれないときは考えないことにします。
⑴ 必ず当選するためには、最低何票獲得する必要がありますか。
「4人の生徒会の役員を選ぶ選挙」なので必ず当選するためには5位にならないだけの投票数を獲得しないといけない。これに必要なのは
336÷5=67.2
より最低68票
⑵ 276票まで開票したとき下の表のようになっています。
Eが必ず当選するためには、残り60票のうち最低何票獲得すれば当選できますか。
まずA(81票)とB(72票)はすでに68票以上あるから当選確実。
とするといま5位のE(30票)は3位か4位をねらうことになる。そのためにはいま3位のC(42票)か4位のD(41票)のどちらかを上回る票を獲得しないといけない。
そこでC、D、Eの3人の争いだけを考える。「残り60票」をC(42票)、D(41票)、E(30票)の3人で争うとき、Eは最低あと何票をとれば最下位にならないかを考えると
- まず3人が横並びになるよういったん42票でそろえるとDは1票、Eは12票をとることが少なくとも必要。このとき残りあと47票(=60-1-12)
- そして 47÷3=15.66… より、ここからさらに16票とれば3人のなかで最下位にならないことが確実になる
よって12+16=28より、Eはあと最低28票とれば必ず当選できる