学習教材に使わないのはもったいない入試問題⑥(一筆書き) | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

一筆書きの問題がときどき出されます。

簡単なポイントがいくつかあり、これを知っているかどうかで結果や解答時間が大きく左右されることになります。いちど習った人でも、模試や過去問にたびたび登場するものでもないため、急に出されてすっかりやり方を忘れていたということもあります。

入試本番前に次の問題などでさくっとポイントを再確認しておきたいところです。

 

次の会話文を読んで、以下の問に答えなさい。(森村学園2023帰国)

Aさん:「一筆書き」って知ってる?
Bさん:知ってるよ。鉛筆の先を紙からはなさずに、同じ線を二度なぞらないで図を書くことだよね。
Aさん:その通り!同じ点は何度も通っていいんだよ。

じゃあ、【図1】と[図2]の図形は一筆書きできるかな?
Bさん:うーん、難しいなあ。【図1】はできるけど、【図2】が思いつかないよ。
Aさん:そう、[図1]は一筆書きできて、[図2]は一筆書きできない図形なんだ。実は、一筆書きできるかできないか見分けるポイントがあるんだよ。
Bさん:教えて、教えて!どこで見分けるの?
Aさん:ポイントは「それぞれの点から何本の線が出ているか」なんだ。例えば、[図1]の点Aからは2本の線が出ていて、点Bからは3本の線が出ているよね。1つの点から出ている線の本数が偶数である点を偶数点、1つの点から出ている線の本数が奇数である点を奇数点というんだ。
Bさん:【図1]の図形だと偶数点が[ア]個、奇数点が[イ]個、【図2】の図形だと偶数点が[ウ]個、奇数点が[エ]個だね。

⑴ [ア]~[エ]にあてはまる数はそれぞれいくつですか。また、【図1】を点Bから書き始めると、一筆書きする方法は全部で何通りありますか。

 

右矢印 【図1】は偶数点、奇数点とも2コずつある。 ア=2、イ=2

【図2】は偶数点1コ、奇数点4コある。 ウ=1、エ=4

Aさん:実は一筆書きできる図形は
 ⑴ すべての点が偶数点
 ⑵ 奇数点がちょうど2個だけあり、それ以外はすべて偶数点
のどちらかの場合なんだ。
Bさん:ヘー、そうなんだ。なんでそうなるの?
Aさん:偶数点は入る線と出る線をペアにして考えると、必ずその点を通過できるでしょ。でも、奇数点はペアをつくれない線が必ず1本できてしまうから、その点は出ていくだけのスタート地点か、入ってくるだけのゴール地点になるんだよ。

Bさん:難しいね…。
Aさん:いろいろな図形で考えてみると、だんだんわかってくるよ!やってみよう。

⑵ 次の図①~⑤のうち、一筆書きできる図形はどれですか。すべて選び、記号で答えなさい。

 

右矢印 それぞれ偶数点と奇数点を見ていくと

  1. 図①…偶数点7コ、奇数点2コなのでできる
  2. 図②…6コぜんぶ偶数点なのでできる
  3. 図③…偶数点5コ、奇数点4コなのでできない
  4. 図④…偶数点1コ、奇数点6コなのでできない
  5. 図⑤…16コぜんぶ偶数点なのでできる
以上より、一筆書きできるのは①②⑤
 
 
 

⑶ 次の【図3】を一筆書きする方法は全部で何通りありますか。

 

右矢印 奇数点はBとDなので、どちらかをスタート地点とするかで場合分けする。

 

  Bから書きはじめるとき

 

❶最初に①の方向に進むとAを通ってDまで行き、そこで㋑と㋒に分かれる。

  • ①→㋑なら③を通り、Cでさらに㋕と㋖に分かれる。そのあとはそれぞれ残り1本の道が決まりDに着く。つまり①㋑③㋕、①㋑③㋖を通る2通り
  • ①→㋒なら、Cで㋕と㋖に分かれ、Bについた後は②を通ってDに着く。つまり①㋒㋕②、①㋒㋖②を通る2通り
したがって、①の方向に進むと4通りある。

❷最初に②や③の方向に進んだときも(通過する順番は違うが)そのあとDとCでそれぞれ2つに枝分かれする点は同じだから、それぞれ4通りある

 

以上の合計で4×3=12通り

 

  Dから書きはじめるとき

 

Bから書きはじめるときと同じく12通り(ACを結ぶ線でちょうど折り返した形なので)

 

よって、一筆書きする方法はぜんぶで24通り 完了