あっち向いてホイ | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

新学習指導要領を根拠に*、中学入試では「確率(確からしさ)」は出題しないというのが暗黙の了解となっているようです。

 
*次の記述がおそらく根拠になっているものと思われます。
「第6学年では、起こり得る全ての場合を適切な観点から分類整理して、順序よく列挙できるようにすることをねらいとしている。ここで育成される資質・能力は、中学校第2学年で学習する確率などの考察につながっていくものである。」(小学校学習指導要領(平成29年告示)P313)

実際、次の問題を最後に、確からしさの問題は出題されていないようです。

コイン2枚を同時に投げました。そのうち1枚は裏でした。もう1枚が表である確からしさを求めなさい。(頌栄女子2019第2回)→答え.⅔

 

ということで、本来は「確からしさ」の問題として出すのがふさわしいようなものも、いまの中学入試では「場合の数」の問題として出題されています。

たとえばつぎの「あっち向いてホイ」の問題。中学以降だと確率の問題として出されるのが自然な問いになっており、そういう違和感は多少ありますが、入試の題材として(じゃんけんはよく登場するのに対し)「あっち向いてホイ」を取り上げたものはなかなかめずらしく、おもしろい問題です。

 

なお、Alexa端末をお持ちなら「アレクサ、あっち向いてホイ」と言うと相手してくれるようです。

太郎さんと花子さんは2人で向かい合ってゲームをしています。次の各問に答えなさい。(京都先端科学大学附属2020B1)
[1] ルールを次のように決めました。

(ア) 太郎さんが指で上、下、左、右のいずれか1つの方向をさす。
(イ) 花子さんが顔を上、下、左、右のいずれか1つの方向に向ける。

(ア)、(イ)を同時に行って、指でさした方向と顔を向けた方向が同じだった場合は太郎さんが勝ち、指でさした方向と顔を向けた方向がちがった場合は花子さんが勝つとします。
⑴ 太郎さんの勝ち方は全部で何通りあるか求めなさい。

 

右矢印 上で勝つ、下で勝つ、左で勝つ、右で勝つの4通り

 

⑵ 花子さんの勝ち方は全部で何通りあるか求めなさい。

 

右矢印 「指でさした方向と顔を向けた方向がちがった場合は花子さんが勝つ」=太郎さんの勝ちでないときはすべて花子さんの勝ちになるというルール。

 

よって、太郎さんの指の方向(4通り)と花子さんの顔の方向(4通り)のぜんぶの組み合わせ16通りから太郎さんが勝つ場合の4通り(小問⑴)をのぞいた12通り

 

 

[2] ルールを次のように変えました。

(ウ) じゃんけんで勝った人が指で上、下、左、右のいずれか1つの方向をさす。
(エ) じゃんけんで負けた人が顔を上、下、左、右のいずれか1つの方向に向ける。

じゃんけんで勝った人とじゃんけんで負けた人が(ウ)、(エ)を同時に行って、指でさした方向と顔を向けた方向が同じだった場合は、じゃんけんで勝った人がゲームに勝ちます。指でさした方向と顔を向けた方向がちがった場合は引き分けとします。
⑶ 1回目のじゃんけんで太郎さんが勝ち、太郎さんがゲームに勝ちました。このような勝ち方は全部で何通りあるか求めなさい。

 

右矢印 ①じゃんけんの勝ち方と②そのあとの「あっち向いてホイ」の勝ち方に分けて考えると

  1. 太郎さんが1回目のじゃんけんで花子さんに勝つ勝ち方は(グーで勝つ、チョキで勝つ、パーで勝つの)3通り
  2. 「あっち向いてホイ」の勝ち方は(上で勝つ、下で勝つ、左で勝つ、右で勝つの)4通り

これらは同時に起きるから 3×4=12通り

 

⑷ 1回目のじゃんけんであいこになり、2回目のじゃんけんで花子さんが勝ち、花子さんがゲームに勝ちました。2回のじゃんけんのうち、花子さんは必ず1回はパーを出しています。このような勝ち方は全部で何通りあるか求めなさい。この問題は、式や考え方も書きなさい。

 

右矢印 余事象で考える。

 

❶2回のうち1回はパーを出す花子さんが2回目のじゃんけんで勝つ勝ち方は5通り(次の㋐-㋑)

 

 ㋐1回目のじゃんけんであいこになるのは(グーであいこ、チョキであいこ、パーであいこの)3通り、2回目のじゃんけんで花子さんが勝つのは(グーで勝つ、チョキで勝つ、パーで勝つの)3通りあるから、花子さんが2回目のじゃんけんで勝つぜんぶの勝ち方は9通り(=3×3)

 

 ㋑ここには1回目のじゃんけんでも2回目のじゃんけんでも花子さんがグーかチョキだったときの4通り(=2×2)も含まれている

 

❷花子さんがそのあと「あっち向いてホイ」で勝つ勝ち方は4通り

 

よって、❶❷より、花子さん(2回のじゃんけんのうち1回はパーを出す)が2回目のじゃんけんで勝つ勝ち方は5×4=20通り

 

学校発表の「考え方」(余事象で考えない)も載せておきます。

花子さんのじゃんけんの勝ち方は次の5通りである。
  1回目のじゃんけんでパーであいこ、2回目のじゃんけんでグーで勝つ
  1回目のじゃんけんでパーであいこ、2回目のじゃんけんでチョキで勝つ
  1回目のじゃんけんでパーであいこ、2回目のじゃんけんでパーで勝つ
  1回目のじゃんけんでグーであいこ、2回目のじゃんけんでパーで勝つ
  1回目のじゃんけんでチョキであいこ、2回目のじゃんけんでパーで勝つ
それぞれのじゃんけんの勝ち方に対して指でさした方向と、顔を向けた方向が同じになつて勝つのは4通りあるので、
 5 × 4 = 20

完了