以前の記事の続きです。
ボルダルールを取り上げた算数の問題として、次のようなものもあります。
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。(海陽中2018特別給費生)
クラスで委員を決めることになりました。Aさん、Bさん、Cさんの3人が候補者で、クラスの10人が候補者3人に1位から3位までの順位を決めて投票しました。結果は
1位Aさん、2位Bさん、3位Cさん の票が5票
1位Bさん、2位Cさん、3位Aさん の票が3票
1位Cさん、2位Aさん、3位Bさん の票が2票
となりました。
それぞれの順位ごとに点数を決めて、合計点の一番多い人が委員になることにしました。点数はすべて異なる整数で、1位が一番大きく、3位が一番小さくなるように決めます。
⑴ 1位には5点、2位には3点、3位には1点と点数を決めたとき、3人の合計点をそれぞれ答えなさい。
「1位には5点、2位には3点、3位には1点」という順位ごとに点数がつく投票システム(ボルダルール)となっている。
「クラスの10人」の投票による得点をそれぞれ計算すると
- 「1位Aさん、2位Bさん、3位Cさん の票が5票」より Aー25点、Bー15点、Cー5点
- 「1位Bさん、2位Cさん、3位Aさん の票が3票」より Aー3点、Bー15点、Cー9点
- 「1位Cさん、2位Aさん、3位Bさん の票が2票」より Aー6点、Bー2点、Cー10点
以上を合計すると、A君が34点、Bさんが32点、Cさんが24点となる。
⑵ Aさんの合計点が37点、Bさんの合計点が30点、Cさんの合計点が23点でした。1位から3位の点数はそれぞれ何点でしたか。
変数が3つあり、これを一から計算でやるのはかなり大変。小問⑴の結果とだいぶ近いところに注目して、小問⑴の結果が使えそうだと予想をつけて取り組みたいところです。
「1位には5点、2位には3点、3位には1点」とすると、A君が34点、Bさんが32点、Cさんが24点になるというのが小問⑴の結果だった。
今回「Aさんの合計点が37点、Bさんの合計点が30点、Cさんの合計点が23点」となっている。
これを小問⑴の結果と比べると、AさんとBさんの差が2点→7点に広がり、BさんとCさんの差が8点→7点にちぢまっている。
これはAさんがより有利になるような点数配分に変わったことを意味する。なぜAさんがより有利になるようにしたかと考えると、これは「1位Aさん、2位Bさん、3位Cさん の票が5票」だったというクラスの多数意見をより重視した結果ではないか(それがボルダルールの存在意義なので)と想像できる。
ということで、仮に1位の得点を1点増やし、2位の得点を1点減らす(ぜんぶの合計得点90点は小問⑴⑵で変わらないので、1位の得点を1点増やしたら同じだけ2位か3位の得点を減らして調整する必要がある)ことで実験をしてみる。すると
「1位Aさん、2位Bさん、3位Cさん の票が5票」
「1位Bさん、2位Cさん、3位Aさん の票が3票」
「1位Cさん、2位Aさん、3位Bさん の票が2票」
だったので、Aさんは(1位を5票とり2位を2票とったので)5点上がって2点下がるから 34+5-2=37点。うまく「Aさんの合計点が37点」という結果に合っている。
これで正解っぽいので、ほかの2人についても同じく1位の得点を1点増やし、2位の得点を1点減らしてみると
- Bさん…3点上がって5点下がるから 32+3-5=30点
- Cさん…2点上がって3点下がるから 24+2-3=23点
となり、やはり「Bさんの合計点が30点、Cさんの合計点が23点」との結果に合っている。
よって 1位は6点、2位は2点、3位は1点
⑶ Bさんの合計点がAさんの合計点を超えることがありますか。超えることがあれば1位から3位の点数の例をあげ、超えることがなければ理由を答えなさい。
ある。たとえば1位6点、2位5点、3位1点
1位と2位との差を小さくする(これにともない3位との差は広がる)と、2位を5票とったBさんと2位を2票しかとれなかったAさんとの差はちぢまる。
たとえば1位6点、2位5点、3位1点とすると、
- 「1位Aさん、2位Bさん、3位Cさん の票が5票」より Aー30点、Bー25点
- 「1位Bさん、2位Cさん、3位Aさん の票が3票」より Aー3点、Bー18点
- 「1位Cさん、2位Aさん、3位Bさん の票が2票」より Aー10点、Bー2点
となり、合計得点はAが43点、Bが45点となってBさんが上回る。
⑷ Cさんの合計点がAさんの合計点を超えることがありますか。超えることがあれば1位から3位の点数の例をあげ、超えることがなければ理由を答えなさい。
さすがにこれはないだろうというのは感覚的にわかる(そうでないとクラスの半数から1位票を取ったAさんが負けてしまい民主主義があやしくなってしまう)ところですが、その理由を言葉でうまく説明するのはかなり難しいので、学校発表の模範解答をそのまま使わせて頂きます。
「AさんがCさんより順位が上なのは5票で、CさんがAさんより順位が上なのも5票です。
しかし、Aさんの順位が上である票は、5票とも順位2つ分の差があり、Cさんの順位が上である票は、5票とも順位1つ分の差しかないから、得点にかかわらず、Cさんの合計点がAさんの合計点を超えることはありません。」