ボルダルール | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

一般入試の算数のなかで社会や理科寄りの問題が出される例も出てきたという話ですが、その逆パターンもあります。

 

次の問題は社会の一般入試で出されたものですが、類問が算数の入試問題として出されることも十分ありうる話なので今回取り上げてみました。

 

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。(広尾学園2021の社会)

 みなさんは学校で多数決を行うことはありますか。クラスの代表1名を決めるとき、候補者が多くいるため多数決で決める場合、通常は一番多くの支持を集めた人が代表となります。しかし、この選び方が本当に公正な選び方といえるのでしょうか。
 以下の例で考えてみましょう。クラスで運動会のリーダーを決める多数決が行われます。クラスには計40名の児童がいます。立候補したのはA君、Bさん、Cさんの3名です。A君はリーダーシップがあるのですが、少し気が利かず、運動が苦手な子に心無い言葉を言ってしまうことがあります。Bさんは優しく、Cさんはとってもまじめで二人とも誰からも好かれます。

 多数決が行われましたが、結果は右の図1の通り、A君がリーダーに選ばれました。ただ、実はこの多数決の前に、3人のうちで誰が最もリーダーにふさわしくないか、をアンケートで聞いたところ、こちらもA君が24票で1位となってしまいました。この結果の矛盾をどう解決すればよいのでしょうか。
 その方法の一つが「ボルダルール」という投票の方式です。この方式では、投票の際に順位をつけてもらい、1票につき1位3点、2位2点、3位1点、といったように順位ごとに点数をつけます。たとえば、10人の人がA君1位、Bさん2位、Cさん3位と投票したらA君30点、Bさん20点、Cさん10点となります。全ての人の投票の得点を合算して、一番多くの得点を集めた人を当選とします。

 

問  ボルダルールを用いてリーダーを決め直すとしたら、誰がリーダーに選ばれるでしょうか。上記のボルダルールの得点法と以下の図2のクラスの児童の考えを踏まえて、一番多く得点を集めてリーダーに選ばれた人の名前と、その得点を記入しなさい。なお、「多数決」で決めた際の投票と、「ボルダルール」の投票での児童の考えは変わらないものとします。
 また、多数決と比較して、ボルダルールで選ぶことの長所は何でしょうか。「一部」と「全体」という言葉を用いて説明しなさい。

●クラスの児童の考え
・A君がリーダーにふさわしいと考えた16名のうち、
     7名は2位Bさん、3位Cさん
     9名は2位Cさん、3位Bさん  と考えています。
・BさんやCさんがリーダーにふさわしいと考えた人たちが、どんな考えを持っているかは本文から推理してください。

 

右矢印 まず「A君がリーダーにふさわしいと考えた16名のうち、7名は2位Bさん、3位Cさん」と考えている。ボルダルールは「1票につき1位3点、2位2点、3位1点」という順位ごとに点数がつく投票システムなので、この7名の投票による得点はA君が21点、Bさんが14点、Cさんが7点となる。

 

また同じくA君に投票した16名のうち「9名は2位Cさん、3位Bさん」と考えているから、この9名の投票による得点はA君が27点、Bさんが9点、Cさんが18点となる。

つぎにBさんに投票した人が14名いる。この14名による得点はA君が14点、Bさんが42点、Cさんが28点となる。なぜなら「BさんやCさんがリーダーにふさわしいと考えた人たちが、どんな考えを持っているかは本文から推理」するしかないが、「3人のうちで誰が最もリーダーにふさわしくないか、をアンケートで聞いたところ、こちらもA君が24票で1位」だったのだから(計40名のクラスなので)A君に投票した16名をのぞく全員がA君を3位と考えているのがわかるからである。

 

そしてCさんに投票した10名による得点はA君が10点、Bさんが20点、Cさんが30点となる。

以上をまとめると「ボルダルールを用いてリーダーを決め直す」としたときの結果はこの表のようになるから「一番多く得点を集めてリーダーに選ばれた人」はBさんで得点は85点

 

多数決と比べたボルダルールで選ぶことの長所は、多数決では一部の強い支持を集めた人でも勝ってしまうことがあるのに対し、ボルダルールでは広く全体の支持を集めないと勝ちにくいため全体の意見をより適切に反映した形で代表者が選ばれやすいところにある。完了