天びん図で差がつく食塩水 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

天びん図を使えないとちょっと厳しいかも…とまではいかないにしても、天びん図を使うのが断然早い問題として次のようなものがあります。

 

  水でうすめる問題(浅野中2021)

 

濃度30%の砂糖水を砂糖水Aとします。砂糖水Aを水でうすめて、濃度12%の砂糖水を作ろうと思います。45gの砂糖水Aに、水を105g入れてうすめたところ、予定より濃度のうすい砂糖水が150gできました。
そこで、この砂糖水に□gの砂糖水Aを追加すれば、濃度12%の砂糖水になります。

 

右矢印 途中いろいろあったものの、最終的に作りたいのは「濃度12%の砂糖水」。これは「砂糖水A」(濃度30%)と「水105g」とからできているから、これを天びん図にすると

天びんの腕の長さが12:18=2:3であることから、できあがった「濃度12%の砂糖水」には砂糖水Aが70g(=105÷3×2)入っているとわかる。

はじめに使ったのは「45gの砂糖水A」なので、あとから追加した砂糖水Aは70-45=25g

 

 

  はじめの濃さがわからない問題①(明治大学付属明治2021第2回)

 

2種類の食塩水A、Bがあります。Aを200g、Bを100g混ぜると、9.8%の食塩水ができ、Aを100g、Bを150g混ぜると、12.2%の食塩水ができます。このとき、Aの濃さは▢%で、Bの濃さは▢%です。

 

右矢印 9.8%の食塩水、12.2%の食塩水の状況を、腕の長さを15でそろえた*天びん図にするとそれぞれ「天びん1」「天びん2」のとおり。

 

*天びん1がA:B=2:1でその和は3、天びん2がA:B=2:3でその和は5であることから、これらの最小公倍数15に腕の長さをそろえたもの

二つの天びんを見くらべると、濃さの差は 12.2%ー9.8%=2.4%。これが4にあたるから、

Aの濃度は 12.2%-2.4%×⁹⁄₄=6.8%

Bの濃度は 12.2%+2.4%×⁶⁄₄=15.8%

 

 

  はじめの濃さがわからない問題②(北嶺中2021)

 

食塩水Aと食塩水Bを、3:5の割合で混ぜると濃度が6.5%の食塩水になり、7:3の割合で混ぜると濃度が7.8%の食塩水になります。このとき、濃度が5.8%の食塩水をつくるためには、AとBをどんな割合で混ぜるとよいですか。できるだけ小さな整数の比にして答えなさい。

 

右矢印 腕の長さが40の天びんを考える(3:5と7:3を比合わせするのに3+5=8と7+3=10の最小公倍数40を使う)。

①「食塩水Aと食塩水Bを、3:5の割合で混ぜると濃度が6.5%」より、A:B=15:25の割合で混ぜても濃度6.5%

②「7:3の割合で混ぜると濃度が7.8%」より、A:B=28:12の割合で混ぜても濃度7.8%

 

この①②を天びん図にしたものがつぎの天びん1と天びん2。①②の濃度の差1.3%が13にあたることがここでわかる。

このAとBを混ぜて濃度が5.8%になるようにするには(6.5-5.8=0.7%より)支点を7だけ左にずらせばよい(天びん3)。

天びん3のB側の腕の長さ8に対し、A側の腕の長さは7+13+12=32だから、AとBの重さの比はこの逆比で8:32=1:4

 

 

  3つの食塩水 (明治字院東村山高校2021)

 
*高校入試の数学の問題ですが、中学入試で出されてもぜんぜんおかしくない問題なので取り上げました。受験生(つまり中3生)の正答率は小問⑴が23.3%、小問⑵が28.1%となっています(学校発表

濃度が11%の食塩水A、7%の食塩水B、19%の食塩水Cがあります。次の問いに答えなさい。
⑴ Aの食塩水200gに食塩を入れて、濃度をちょうど20%にしたい。必要な食塩の量を答えなさい。

 

右差し 「水でうすめる問題」の逆で「塩で濃くする問題」。これも天びん図でももちろんできますが、つぎの「水の濃度」という考え方もぜひおさえておきたいところです。

 

右矢印 「Aの食塩水200g」に入っている水の量は200×89%=178g。

この水の量は最後まで変わらないから「濃度をちょうど20%にしたい」ということは水の濃度がちょうど80%になるようにすることを考える。となると

 178÷0.8=222.5g

の食塩水ができあがるようにすればいい。

よって、入れる食塩の量は 222.5-200=22.5g

 

⑵ Aの食塩水300gとBの食塩水50gを混ぜて、そこにCの食塩水を加えて濃度をちょうど14%にしたい。必要な食塩水Cの量を答えなさい。 

 

右矢印 この状況を1つの天びん図にすると次のとおり。

この左側のモーメントは50×7+300×3=1250。右側のモーメントは□×5。

これらは等しいので □=250g 完了