小学生の時計はときどき左回り⑤ | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

時計の針を左回りさせるという発想で、今年も次のようなおもしろい問題が出されています。

 

短針と長針のついた時計があります。図のように、最初は短針と長針が12時の位置でぴったり重なっています。短針は1時間につき30°の一定の速さで右回りに動きます。長針は次のルールに従って動きます。
(ア) 長針は1時間につき360°の一定の速さで動きます。
(イ) 長針は、最初は右回りに動きます。
(ウ) 長針が右回りに動いている間に短針とぴったり重なると、長針は回り方を変えて左回りに動きます。長針が左回りに動いている間に短針とぴったり重なると、長針は回り方を変えて右回りに動きます。ただし、回り方を変えるのに必要な時間はないものとします。(灘2022・第2日)

⑴ 短針が動き始めたのち、初めて短針と長針がぴったり重なるのは、短針が動き始めてから▢時間後です。

 

右矢印 短針はふつうに「右回りに」、長針は「最初は右回りに」動く。その速さは「短針は1時間につき30°」、「長針は1時間につき360°」なので、ふつうの追いつき算として計算すると

 360°÷(360°-30°)=¹²⁄₁₁時間後

 

その次に短針と長針がぴったり重なるのは、短針が動き始めてから▢時間後です。

 

右矢印 長針は「右回りに動いている間に短針とぴったり重なると、長針は回り方を変えて左回りに」変わるから、こんどは距離360°の出会い算として計算すると

 360°÷(360°+30°)=¹²⁄₁₃時間

 
昨日紹介した和分の積を使って、長針は1時間で左回りに1周し、短針は12時間で右回りに1周するので、積/和=(1×12)÷(1+12)=¹²⁄₁₃時間という出し方もできます。

よって「短針が動き始めてから」だと ¹²⁄₁₁+¹²⁄₁₃=²⁸⁸⁄₁₄₃時間後

 

 

⑵ 短針が動き始めたのち、初めて図の12時の位置で短針と長針がぴったり重なるのは、短針が動き始めてから何時間後ですか。

 

右矢印 小問⑴より、長針が右回りと左回りをそれぞれ143回くり返したとき=288時間後に(288は12の倍数)短針と長針が12時の位置で「出会う」ことはすぐにわかる。

でもそんな簡単な問題であるわけがないので、あらためて「初めて」ぴったり重なる場所をさがす。つまり長針が右回りのときに12時ちょうどの位置で短針に「追いつく」場所があるはずだという当たりをつけてさがしてみる。

 

このとき、小問⑴より、長針が右回りと左回りを▢回ずつくり返し、そのつぎに右回りになって短針に追いつくのは

 (²⁸⁸⁄₁₄₃×+¹²⁄₁₁)時間後

と表せる。これがいちばん小さい整数になるような整数▢を見つければよい(このとき、288も12の倍数なので、全体は必ず12の倍数となり12時の位置で重なる)。

 

上のカッコの中の式をわかりやすく整理すると

 ²⁸⁸⁄₁₁×▢ ⁄₁₃+¹²⁄₁₁

これが整数となるためにはまず▢は13の倍数でなければならないことがわかる(288も12も13の倍数ではないので)。

 

ここからすぐに▢=13、26、39…とやって力技で計算していっても何とか正解にたどりつけるが、少しラクをするとしたら、つぎにこの式の分子を11で割ったときの余りに注目する。

右側の¹²⁄₁₁の分子12は11で割ると1余る。

一方、左側の²⁸⁸⁄₁₁の分子288は11で割ると2余る(288÷11=26…2)から、その積(2×▢ ⁄₁₃)は11で割ると1足りない数でなければならない。

ここまでおさえたうえで▢=13、26、39…と入れていくと、最初にこれを満たすのは(2×▢ ⁄₁₃=10となる)▢=65のとき。

 

つまり長針が右回りと左回りを65回ずつくり返したあとの66回目の右回りのときに初めて12時ちょうどの位置で短針に追いつくことになります。

よって ²⁸⁸⁄₁₁×⁶⁵⁄₁₃+¹²⁄₁₁=¹⁴⁵²⁄₁₁=132時間後 完了