以前の記事の続きです。
回転体に関する問題で、体積比を求めさせるものがときどき出されます。
次のような問題です。
下の図のように長方形ABCDの辺AD、BCを10等分した点どうしを結び、10個の長方形に分けます。このとき、斜線部分を直線𝓵を軸として1回転させてできる立体の体積は、長方形ABCDを直線𝓵を軸として1回転させてできる立体の体積の▢倍です。ただし、円周率を3.14とします。(東京都市大付属2020第3回)
「斜線部分を直線𝓵を軸として1回転させてできる立体」をア、「長方形ABCDを直線𝓵を軸として1回転させてできる立体」をイとする。
問題は (アの体積)÷(イの体積) を求めるものだが、アとイの高さは一緒なので結局、 (アの底面積)÷(イの底面積) を求めればいい問題だということ。
そこで底面積だけを見ていく。
10コに分けた長方形のうちいちばん左側(内側)の長方形(斜線あり)を回転させたときの底面積を1とすると、左から2番目(斜線なし)の長方形を回転させたときの底面積は4、以下3番目から順に9、16、25、36、49、64、81、100となっていく。
つまり、アの底面積は
1+(9-4)+(25-16)+(49-36)+(81-64)=1+5+9+13+17=45
イの底面積は100なので、45÷100=0.45倍
ここからが本題なのですが、「円周率を3.14とします」とあるただし書きは最後まで使わなかった。使わないのになぜわざわざこれを書いたのか?(引っかける目的か?)という疑問がわくところですが、これには次のような興味深い採点者コメントがついています。
「問8は以前、同様の問題を出題した際に「円周率3.14がない」という質問が試験中に相次ぎ、今回予防のために記載したが、「3.14が解答には必要ない」ことに気づかず無用の計算を強いられて誤答した受験生が多かったと推測される。」
なるほどこれを書いておかないと試験会場が混乱してしまうようです。
これと同じ配慮があったと思われる入試問題はほかにもあります。
不要な3.14②(普連土2018)
下の図の四角形ABCDは長方形です。この長方形の辺ABを軸として1回転させてできる立体を㋐、辺BCを軸として1回転させてできる立体を㋑とします。これについて、次の比を最も簡単な整数の比で答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。
⑴ ㋐と㋑の体積比
⑵ ㋐と㋑の側面積の比
⑶ ㋐と㋑の表面積の比
こちらも3問すべて円周率がいくつかとは無関係に正解が出ます。
小問⑴ ㋐の体積は9×9×え×6、㋑の体積は6×6×え×9で求められるから、その体積比は(共通する「6×9×え」で割って)9:6=3:2
不要な3.14③(清泉女学院2021)
右の図の長方形ABCDを辺ADの周りに1回転してできる円柱の体積は、辺ABの周りに1回転してできる円柱の体積の何倍になりますか。ただし、円周率は3.14とします。
1.4倍。過去記事で取り上げていますので、解説はこちらを参照ください。
以上のとおり、解答には必要ないのにわざわざ「円周率は3.14とする」といった注意書きがつくことがあることを知っておき、むだに混乱したり、無用の計算をしたりすることなく対応できるようにしておきたいところです。