パップス=ギュルダンの定理 | 受験算数はきょうもおもしろい

昨日の記事の続きです。

 

回転体の体積について語るうえで避けて通れないのが「パップス=ギュルダンの定理」です。高校数学でも習わない定理であり、正面切って使える定理ではない*ことは確実なので深入りはしませんが、便利すぎる定理だし、仕組みも簡単(証明は超難しいのに)なので、時間がないときや検算のときにはぜひ活用したいところです。

 
それでも今回取り上げたのは「点をつなげていくと線になる、線をつなげていくと面になる、面をつなげていくと立体になる」という、この定理の根本にある考え方は小学生でも理解できるはずだし(実際これを小学生に教えている塾もあるようです)、今後いろいろな場面でこの発想があると役に立つ(とくに数学ではきわめて重要になる)ためです。
あと、パップスさんとギュルダンさんは時代も国も違うまったくの別人(だからパップスギュルダンと書く)という命名がおもしろい定理でもあります。

パップス=ギュルダンの定理を知っていると大きく時間短縮ができそうな問題として、次のような出題例があります。

 

図の斜線部分を、直線𝓵の周りに1回転させてできる立体の体積を求めなさい。(解答は式と答を書きなさい。)
ただし、円すいの体積は (底面積)×(高さ)÷3 で求められます。(洛星中2015)

 

洛星中学校 2023年度受験用 赤本 1008 (中学校別入試対策シリーズ)

 

 

右矢印 まず回転軸をまたぐ図形の場合、左側の図形を回転軸で折り返して右側の図形に重ねてみる。このように合体させた図形を回転させる問題だと最初に問題文を読み替える。

つまり、次の図形を回転させる問題だということになる。

これは半分から上と下で線対称になっているので、まず上半分だけを考える。上半分を次のように❶平行四辺形と❷ひし形(の右半分を上下に重ねたもの)とに分けて考える。

 

  ❶平行四辺形(赤)

 

この平行四辺形を回転させると、大きな円すいから小さな円すい2コ(上半分の円すいと中の円すい)を切り取った形になるので

  大きい円すい…12×12×3.14×24÷3=3617.28㎤

  小さい円すい…大きい円すいの相似形で半径½なので体積は⅛

より、3617.28× (1-⅛×2) =3617.28×¾=2712.96㎤

 

  ❷ひし形の右半分を上下につなげた図形(青)

 

この図形を回転させると、半径3㎝、高さ6㎝の円すい(❶の大きい円すいの相似形で半径¼)を上下につなげた立体となるので、その体積は

  3617.28×¹⁄₆₄×2=113.04㎤

 

以上より、求める図形は❶❷を合体させて2倍したものなので、その体積は

  (2712.96+113.04) ×2=5652㎤

 

 

パップス=ギュルダンの定理

 

❶の体積を求めるところで本題のパップス=ギュルダンの定理を使うと、次のように同じ結果となり、計算が間違っていなかったことがわかります。

 
なお、本問には「(解答は式と答を書きなさい。)」とわざわざ書いてあり、パップス=ギュルダンの定理を使ったあとが式に残っているとまず間違いなく減点されるはずです(なお、この定理をそのまま使うと大学入試でも減点されるようです)。

この平行四辺形のつくる回転体の体積は「面積×円周」で求められることがわかっているから

  面積…6×12=72㎠

  円周*…12×3.14=37.68㎝

より 72×37.68=2712.96㎤

 
*図形の重心(≒中心)が動く長さを使うので、平行四辺形だとその中心(対角線の交わる点)から直線𝓵までの長さを半径とする円で考えることとなる。

 

  最後に

 

答えの5652㎤を見ると、❷で使った一番小さい円すい1コの体積56.52㎤のちょうど100コ分になっていることがわかります。

最初からこの一番小さい円すいを基準に考えるのがよさそうだと勘づいて、少し手を動かしたあとに、全体はその100コ分だということを途中で見抜くようなスーパー小学生もきっといることと思います。