受験算数で数学公式を使う?使わない?(その3) | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

公式を丸暗記することのデメリットとしてよく挙げられるのは、現場での応用がきかないということです。少しヒネった問題を出された(出題者は当然そういうことをしてくる)とたんに対応できなくなってしまうというのではたしかに問題です。

しかし、公式の背景にある原理原則を理解するということはまちがいなく重要なことです。公式は先人の知恵であって、公式そのものに罪はなく、「丸暗記」の方に問題があるという本質はきちんとおさえておく必要があります。

 

ある月のカレンダーの水曜日の数の和は75です。この月の水曜日のうち、最も数が大きいのは何日ですか。

(名古屋経済大学市邨中2022)

 

 

名古屋経済大学市邨中・高蔵中学校入学試験問題集2022年春受験用(実物に近いリアルな紙面のプリント形式過去問) (愛知県中学校過去入試問題集)

 

右矢印 月には4週の月と5週の月とがある。

5週の月の見分け方は簡単なのでまずこっちから試す。和が5で割れれば5週の月。その商が真ん中(第3週)の日にちとなる。

本問では「ある月のカレンダーの水曜日の数の和は75」なので5で割り切れる。商は15。真ん中の日にちが15日なので、最も数が大きいのはその2週間後の 29日 完了

 

ちなみに、5で割り切れなかったという場合(たとえば「和は58」だったとき)には

「42を引いて4で割ると最初(第1週)の日にち」

というのが求め方になります。

もちろん丸暗記するのではなく、なぜそうなるかという背景を確認しておくと、

「4週の月なら2週目の水曜日となる日にちは+7、3週目の水曜日は+14、4週目の水曜日は+21されており、和のなかに7が6回分(=1+2+3)含まれている」

ので、その和は4では割り切れず、4で割る前にこの7×6=42をまず引くということです。

 

 

最後に、なぜ丸暗記がダメなのか、公式とどのように向き合えばいいのかについてきわめて的確な指摘がなされている良書2冊とその本からの引用を紹介します。

 

文系の人が数学を楽しいと思えず、点数もあまりとれないのは、もしかすると公式を丸暗記しようとしているからかもしれません。

 どうせ覚えるのなら、公式に到達するまでの途中のプロセスもすべて覚えるようにしてください。そうすれば試験の点数は上がります。」(竹内薫『中高生の悩みを「理系センス」で解決する40のヒント』)

 

 

 

「しかし、公式を丸暗記することには意味がありません。生徒の側は、公式を教わったうえで、なぜそれが成り立つのかを、最初から自分でもう一回やってみなくてはいけません。その手間が必要なのです。

 <中略>

 ところが、丁寧に説明することを怠るから、ついていけない子どもが出てくる。そこでつっかえた子どもは、「算数って無茶苦茶だよ」と抵抗する。その抵抗は自然な反応ですから、それを乗り越えられるようにすればいいだけの話です。」(養老孟司『「自分」の壁』