部分点を取りに行く入試戦略 | 受験算数はきょうもおもしろい

難しくてよくわからない問題であっても部分点だけでも取りに行くという姿勢は、文字通り1点を争う入試において、きわめて有効な戦略となります。

 

もちろん解答だけ書く問題では部分点はまずないはずで、部分点の対象である問題は次のように明確に示されています。

 

(洗足学園2017年第2回33⃣⑶)

 

まず問題文に「この問題は解答までの考え方を表す式や文章・図などを書きなさい。」といった注意書きがあり、解答欄にもそれ専用の欄が用意されています。

 

たとえ解答が空白だったり間違ったりしていても部分点をもらえるチャンスがありますよというメッセージなので、これを取りにいかない手はありません。ではその部分点はどうしたらもらえるのか(逆に途中式が原因で減点されることはないのか)、その具体的な取り扱いについては公表していない学校が大半ですが、ヒントとなりそうな採点者コメントを公表している学校があります。

 

そこで今回は、本問に付いた採点者コメントなどから、本校の部分点の取り扱い(その多くは他校でもそのまま通用するはず)について考えてみたいと思います。

 

まず、本問について発表されている模範解答は次のとおり。

 

これに対する採点者コメントは次のとおり。これを読み解いてみると

 

①正解者52.1%と部分点獲得者37.6%の合計で約90%になっている

右矢印 よくわからないので白紙にした受験生も絶対にいるはず。そう考えると、とにかく何かを書いておけば部分点をもらえる可能性がある

ただし「決めつけ」は論外(逆にマイナス印象)。

 

②「大小関係が分かったり、一部の数が求められたりしていて部分点を得た」

右矢印 取っかかりとなる大小関係がわかっただけでも(最初の4行部分のこと?)部分点はもらえる。Bだけが正解であっても部分点はもらえる。

 

 

これだけでは情報不足なので、同じ入試回の別の問題(2017年第2回3⃣⑷)についたコメントも見てみます。

右矢印 ここでも正解者と部分点獲得者の合計は90%近い。きちんと問題に向き合った受験者には何とか得点させてあげようという学校側の温かい配慮がうかがえる。

また、ニュートン算だと「タンクの水の量」や「1分あたりに入る水の量」だけ出せた答案でも部分点がもらえる。

 

さらに、別の回に出されたコメントからも、参考になりそうな情報を拾ってみると

 

(2017年第1回5⃣⑴)

右矢印 流水算で静水時の速さを求める問題だと「上りの速さや下りの速さ」だけ出せたものでも部分点がもらえる。

 

(2017第1回4⃣⑵)

右矢印 場合の数だと「場合分けをして部分的にまとめる」だけでも部分点の対象になる。

 

(2017年第1回3⃣⑷)

右矢印 旅人算だと「移動した時間や距離」を求めただけでも部分点の対象。

 

(2017年第1回3⃣⑶)

右矢印 濃度算だと、操作ごとの「食塩の量や濃度」を求めただけでも部分点の対象。

 

(2016年第3回3⃣⑷)

右矢印 つるかめ算でケーキの値段を求める問題で「プリンとケーキの個数の差や、それぞれの個数」を求めただけでも部分点の対象。

 

(2016年第2回3⃣⑶)

右矢印 水量変化の問題で沈めたおもりの体積がきかれているときに「容器の底面積や水の体積」を求めただけでも部分点の対象。

 

 

というように、その問題を解くうえでカギとなるような中間解答や途中式、その他きちんと問題に取り組んだことが採点者に伝わるような説明や図などがあれば部分点をもらえる可能性があるといえそうです。

 

なお、上記コメントを見ても、部分点はあくまで加点目的(受験者救済目的)で使われるものであり、途中式が原因で減点されることはほぼない(解答があっておれば途中式は見ない)と考えてよさそうです。当日発表を原則とする中学入試では数時間内に採点を終える必要があり、減点の有無まで細かく判断している時間や労力はないはずだからです。

 

まとめると、部分点がある問題では(正解できそうになくても)とにかく手を動かしてどん欲に部分点を取りに行くという姿勢(そういう欲があまりない小学生も多い)と、問題にきちんと取り組んだことを答案上でうまく採点者にアピールすることが重要であり、本番までにぜひ身につけておきたいところです。(うまくいけば、部分点ねらいで図などを書いている途中で思いがけず正解にたどりつくことも当然ありえます。)