ゲイ嫌いのいない街をさがして -9ページ目

ゲイが多数集まるバーに潜入

アイダに「ゲイバーって、どこにあるの?」と尋ねると、「えっ、ゲイバーってなに?」と、彼女はキョトンとした顔をした。
「ゲイが沢山あつまって酒を呑むカンティーナ(酒場)って、ないの?」
アイダは少し考えてから「う~ん、あるのかもしれないけど、私は聞いたことがないです。でも、ゲイがけっこう来るバーなら知っています。店のマスターがゲイと付き合っていて、そのゲイの友達がたくさん来るわ。」

アイダは今晩は予定が入っている(明日のムシェの祭りには付き合ってくれるそう)とのことなので、地図を書いてもらって一人で乗り込むことに。ホテルに戻ってシャワーを浴び、夜を待つワタクシでありました。

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町のお金持ちが食べに来るレストランで食事。トルティーヤでチーズと鶏肉を巻いて揚げたモノに、モレーレというチョコレート仕立てのソースをかけたもの。タマリンドという果物のジャンゴ(ジュース)がウマかった。

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お金持ちのご婦人グループが、「オホホの会」みたいなのをやっていました。ああン、あの中に入りたーい。


アイダの書いてくれた地図をタクシーの運転手オジサンに見せ、バーに向かった。
タクシーを降りるとき、「その、首から下げたカメラを隠しなさい」と、運転手のオジサンからジェスチュアで示される。「物盗りが多いし、銃を持っているヤツもいるから」

僕はカラダも顔つきもイカツイせいか、外国でもあんまり危険な目には遭ったことがない(NYで身長2mぐらいの黒人に犯されそうになったことがあるが、それは今となればスウィいいト・メんムりぃ♪)。なので、海外にいるというのに警戒心がまったくなくなっていることが往々にしてある。でも、そのへんを歩いていてフツーに銃を目にするような場所では、警戒心を捨てては大変なことになるかもしれない。ちょっと緊張してタクシーを降りた。

あたりを見回していると、どうみても12歳ぐらいにしか見えない少年が、そこいらの壁や電信柱になにやら政治的なポスターを貼りまわっていた。糊づけのための刷毛などないらしく、バケツに入ったヤマト糊みたいな接着料を素手でポスターにベッチョリとつけて貼っている。僕を見つけると、近寄ってきて「シガーロ、シガーロ(タバコ)」とせがんできた。

年端もいかない少年が人気のない暗い夜の町で政治的なポスターを貼ってまわっている(いくらかの稼ぎになるのだろう)という光景が、日本人の自分にとってはシュールで、「未成年だろ」とつっこみもせずタバコの箱を開けて差し出してしまった。すると少年は、箱から7、8本のタバコを抜いてズボンのポケットに入れた。「ありゃま、そんなに持ってくかねー」と思ったが、この町ではタバコをあげるときには箱から1本取り出して渡さない限り、こういうことになってしまうらしい。

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ポスターを貼っていた少年。

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ゲイが多く集まるバー。



バーの中に入ると、7~8人のお客が呑んでいて、雰囲気はまさしくゲイバー。
ちょっとホッとして席に着くと、カラダもデカく顔もカタギには見えないぐらいコワモテのマスターがスペイン語でなにか話しかけてきた。何を言っているのかサッパリわからないが、注文をとりにきたのだろうと思い、「セルベッサ(ビール)・ソル(ソルというメジャーなビールの銘柄)、ドス(2本)」と告げると、「シ(はい)」と言って持ってきてくれた。
一本をマスターに差し出し、「サルー(乾杯)」と言うと、マスターは口角をキュートに上げて「グラッシャス(ありがとう)」ほほえんでくれる(なぁんだ、このヒト怖そうに見えるけど、カワイイんじゃん)。

マスターはちょっと照れたような顔をしながら「ドンデ~~~」と、話しかけてきた。意味はわからなかったが、ドンデというのは「WHERE」にあたる単語だから「どこから来たのか」と聞いているのだろうと思い、「ソイ・ハポネサ(私は日本人です)」と返事をした。
するとマスターは「ゴジラ!ゴジラ!」と、知っている日本語(日本語?)を言ってくれる(ゴジラは自分だろとツッコミたくなりましたが)。うれしいじゃないスか!

「クアテ(私の友達は)・ラマール(呼ぶ)・ヨ(私を)・ゴジラ(ゴジラと)・ハポン(日本で)」と指さし会話帳をパラパラめくりながら言って、笑いをとる。ゴジラと呼ばれているなんてウソだけど、笑いは大事だもん。ばっちりウケたので、言った甲斐がアリマシタ。

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でかく、いかつく、なのに人なつこいマスター。パッと見はコワイけど、実はやさしい怪獣。

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「僕は少し英語が話せる」と言ってきてくれたフェルナンド君。メキシコには一体、何万人のフェルナンド君がいるのだろう。

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そんな様子を見て、他の客たちも次々に話しかけてきてくれた。

フチタンのゲイたちも、他の町のゲイと同じように人なつこい。少しだけ英語が話せる人もいて、大助かり。撮った写真をプリントして渡すと、みんな「オオオーッ」と驚きの声をあげてくれました。いかついマスターも僕の肩をチョンチョンとつついて、「オレも撮ってよー」とテレながら自分を指さした。ンもう、カワイイんだからぁん☆



英語が少し話せるフェルナンド君に「マスターはゲイなの?」と聞くと、「ゲイではないけど、いまゲイと一緒に暮らしている」という返事。フチタンには「ゲイ」という言葉はあるけど、やっぱり日本で言うところの「ゲイ」とは概念が違うみたいだ。

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マスターのカレシ。なかなかのイケメン。

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日本VSメキシコ、ブス対決。

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ゴージャス折り鶴を作ってあげると、紙工芸大会になってしまった。


「明日はムシェの祭りに行くの?」と聞くと、みんな「もちろん!」と答えた。明日は英語が話せるアイダも一緒だし、みんなで一緒に楽しめるかも。明日が楽しみになる、ワタクシ。
オアハカのゲイバーと同様、フチタンのゲイ達も音楽が大好き。
ジュークボックスの歌にあわせて、歌いまくる。一緒になって夜更けまで歌いはじけまくる、ワタクシでありました。

イケメン・ゲイカップルとちびっこパレード

今日は、フチタンのムシェの祭の日。その祭りには多くのゲイが集まり、夜通し飲み明かすという。
フチタンには、年間600もの祭りがある。「今日は高校生の祭」「今日は○○地区の祭」「今日は漁師の祭」といったように、毎日なにかしらの祭が開催されている。今日は、その600の祭のうちのひとつ、ムシェの祭なのだ。ムシェ(男性から女性へのトランスセクシャル)の祭は、ホテルに掲示してある「祭スケジュール」にも他の祭と同様に記されていた。

昨晩に夜更けまでゲイの集まるバーで騒ぎまくり(旅行者に酩酊は禁物なので酒量は控えめだったが、シラフでもアホができるのが、ワタクシの強みでございます)、美しく爆睡をブッこいていたところを、電話の音に起こされる。アイダからの電話だった。「今日は夜にムシェの祭りがあるけど、昼間は子供たちの祭りなの。一緒に見ましょうよ。」と、アイダ。飛び起きてセントロに向かうワタクシなのでありました。

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どこの国の子供でも子供はカワイイものだけど、メキシコの子供の愛らしさは反則!子供パレードは、見物人の数もすごく、大盛況でした。「キビキビ歩け!」と子供を叱りとばすお母さんもいて、ステキ☆

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子供にライフルを持たせた扮装をさせていたのには、ちょっとビックリ。アイダが言うには、メキシコ革命の英雄・サパタの扮装なのだそう。子供の顔って、ヒゲ描くとカワイイねー。帰国したら、日本の子供にも描いちゃお☆


子供たちの可愛さにデロデロにとろけまくっていると、不意に5人連れの若者たちが話しかけてきた。
「昨日、自分たちの友達の写真を撮ったでしょ(メルカドでお母さんの手伝いをしていたゲイたちのことらしい)。オレ達も撮ってよ!」と言っているのだと、アイダが訳してくれた。

写真を撮ってプリントしてあげながら「君たちはゲイなの?」と聞くと、一人の青年が「コイツとコイツはゲイ」と、イケメンふたりを指さした。別の青年が「コイツはオトコとつきあったことがある」と他のひとりを指して言うと、言われた若者は「ねぇよ」と笑いながら言った。するとみんな、「あるだろ!」と口々に言って「ねぇよ」と言った青年のアタマをぺしぺし叩いて笑った(アイダが、爆笑しながら訳してくれた)。
ゲイであることをオープンにした上で、ノンケとアソートで仲良しグループが形成されているなんて、すごい。フチタンて、日本のゲイの僕にとって、カルチャーショックなことばかりだ。

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ノンケもゲイも入り混じった仲良しグループ。

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恋人同士のふたり。イケメン☆

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フチタンの女の人の盛装。デザインはムシェの仕事。

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パンツはフツー(なのか?)のをはくんですね。




カムアウトしたての中学生ゲイ

中学生達がバスケットボールに興じる校庭にカメラを無造作に向けるたら、こんな状態になられてしまった。「ヒョエ~」と叫んで逃げたが、ものすごい勢いで追ってこられてしまう。どうしていいかわからずに、「こんなに大勢の10代の男の子に追い回されるなんてぇン☆」と、とりあえずウットリしてみました(バカ)。

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この中にゲイの子がいないかと思い、苦労して聞き出したところ、みんなが指し示したのは14歳のエンリケ君。なんでもエンリケ君は、自分がゲイであり、もしかしたらムシェかもしれないことを父親に告げたばかりとのこと。

「お父さんは、どんな返事をしましたか?」と、エンリケ君に質問してみる。
「僕の父は医者で、父は僕に医者になって欲しかったので、少しがっかりしていました。でも、お前にはお前の人生を決める権利があると、すぐに理解してくれました」と、答えるエンリケ君。
「学校のみんなはエンリケ君のこと、どう思っているの?」と、周囲の少年に聞いてみると、「コイツは面白いし悪くないヤツだから友達だよ。でも、好きになられてもオレは困るけど」と、一人の少年が答えてくれた。

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14歳のエンリケ君。シャイで可愛い子でした。

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高校生カップル&友人にも出会いました。


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今晩ムシェの祭が開催される広場に行ってみると、音響機材はセットしてあるものの、なんの飾りつけもされていない。
「このまま祭をやるの?」とアイダに尋ねると、「飾りつけはお金がかかるから、ベラ(大祭)じゃない限り、やらないわ。」とのこと。年間に600も祭りがあるんだから、いちいち飾り立ててもいられないか。。。そうこうしているうちに、ポツリポツリと雨が降り始め、そのうち土砂降りになった。
「こういうこともあるし、やっぱり飾りつけはムダになることが多いの。」と、アイダ。
「こんな雨じゃ、祭が中止になっちゃうんじゃないかな。」
「ダイジョウブよ、すぐにやむわ。」
レストランで軽食をとりながら、雨がやむのを待つアイダとワタクシでありました。

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揚げたトルティーヤとチーズの入ったソパ(スープ)。揚げ油の匂いとトマト風味のスープがマッチして美味。

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チーズと鶏肉を巻いて揚げたトルティーヤにコールスローサラダのようなものをかけたもの。

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雨もやみ暗くなると、ヒトが集まってきた。

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ムシェの祭を見に来た高校生ノンケ・カップル。フチタンといえども、ほとんどの人はノンケであります。

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やけにベタベタしてる女の子たちだったが、あとで考えれば♀♀だったのかも。

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やっぱ、ムシェの祭なんだから♀♀だって来るよねー。

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「私の父はムシェなの」と言われて、びっくり。そういうのもアリなんだって!吉本ばなな「キッチン」みたいなもんか(違)?。

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かわいいノンケ君たちも、祭を見に来ていました。