中学の同級生にBというやつがいた。
同じクラスになったことはなくて、話をした覚えもないので、友人と呼べる仲ではない。
しかしBは中々濃いキャラであったようで、時々噂を耳にした。
Bにまつわる噂で印象的だったのが、Bが河童を捕まえたという話だ。
友達数人と駄弁っている最中に本人が言い出したらしい。
中学生にも分かる嘘と言うか、今にして思えば痛々しい虚言ととらえて、さりげなくスルーしてあげるのがマナーであると思うのだが、そこは残虐な中学生が許さない。
突っ込みどころ満載のこのネタに突っ込みまくったらしい。
先ず核心を突いたのは、その河童を見せろという突っ込みだった。
それに対してBは、池で河童と格闘していて頭の皿をもぎ取ったら死んでしまったので、死体はそのまま池に放置したと切り返した。
それならばその皿を持って来いと突っ込みの波状攻撃は続く。
Bは冷蔵庫に保管していたが、干からびてきて異臭を放ってきたので捨てたと返した。
その後も下らない突っ込みと切り返しのやりとりが暫く続いたようだが、やがて飽きた友人達が、てめぇ下らねぇ嘘付いてんじゃねぇ!!!!と核心中の核心を突いてこの話は終わったらしい。
俺は後になって、この話を聞いた。
Bのしょうもない嘘だとは思ったが、その後一人になった時、Bと河童の格闘シーンを想像してしまった。
膝くらいまでの浅い池の辺で、Bと河童が格闘している。
取っ組み合い、Bは全身ずぶ濡れだ。
夏休みも終わりに近づいた夕暮れ。
ツクツクホウシとヒグラシのBGMが闘いの場面を包み込む。
やがて勝敗が決する。
水中に没したまま動かなくなった河童と、片手に河童の皿を持ったまま息を切らせながら見つめるB。
恐怖と興奮となんだか名づけようもない感情が入り混じったBは、そのままその場を動けずに立ちすくんでいる。
夜の帳が下り、Bは池を離れとぼとぼと家路を辿る。
ずぶ濡れで、片手に河童の皿を持って。
Bは泣きじゃくっていた。
日曜日、家族で近所の池でメダカを捕って遊んでいて、突然この古い空想が鮮明な映像でよみがえった。
ひょとしたらBは本当に河童を捕まえたのかもしれない、とか思った。
しかし、今となっては、本人に直接訊ねることもできない。
Bは17歳くらいの頃、オートバイの事故で死んでしまったからだ。
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