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【ミームの理(ことわり)最終話】

そのとき美夢がゆっくりと瞳を開いて、微笑んだ。

二人は、彼女のコトバに注目した。


「わかりました。私は創造主のところにまいります。でもひとつだけ教えてください。

創造主の期待していることはなんでしょうか?」

教授は、静かに応えた。

「たぶん、期待を裏切ることだよ。」

ディビットが、少し驚いたように瞬いた。

「教授!それは、どういう意味ですか?」

「創造主は、138億年前にこの宇宙を創られた。

それは秩序のある構造だった。

最初に蜘蛛の巣のような4次元フィラメントが現れた。

そのフィラメントに沿って超銀河団を配置した。

超銀河団の中には銀河団があった。

銀河団は、銀河が数千万個集まったものだ。

われわれの銀河系はそのひとつの銀河に過ぎない。

その銀河のなかにはさらに数千万の恒星系が存在する。

その恒星系のひとつが太陽系ソルなのだ。

太陽系は、この銀河の中でありふれたものでしかない。

そして地球に似た惑星は数えきれないほど存在する。

でも…。」

「でも、生物が進化する環境を備えた特別な恒星系だったのですね。」

美夢がそのコトバを受け取って続けた。

「そう!でも、ちょっとニュアンスが違う。

進化する環境があってもそれが38億年も継続したということが珍しいんだ。」

「地球生物は絶滅の危機に何度も遭遇していますね。」

「そう!35億年ほど前には、火星や水星という大きさの小惑星には何度も衝突され、

そのたびに地表は地殻津波に襲われ地表の生物は死滅した。

海は蒸発し、地表は灼熱の金属蒸気に覆われた。

それは数1000年もの間、続いた。

その間生物たちは地表から数10キロメートルの深さでじっと潜んで

環境が回復するのを待った。

やがて地表の温度は下がり、蒸発していた水蒸気は雨となって地表を覆い、

それは海となった。

潜んでいた生物たちは、海に進出して隆盛を誇るようになった。


25億年前、一部の生物が酸素を放出する仕組みを備えた。

光合成を始めたシアノバクテリアだ。

大気中に放出された酸素は、温室効果ガスであるメタンガスを酸化し

急速に地球は冷えていく。

24億年前に地球は大氷河期を迎え、全球凍結という事態に陥る。

地表の生物は、ふたたびほとんどが滅びた。

あるとき火山噴火が引き金となって氷河は徐々に溶けていった。

そして氷河期を脱した。



そんななかで酸素を利用する生物が現れた。

ミトコンドリアだ。

あるとき別のバクテリアがミトコンドリアと合体して新しい生物が生まれた。

これが現在の動物にも細胞として受け継がれている。


7億年前に大気中の二酸化炭素が固定され、温室効果が減じ、

再び大氷河期に入り遂には全球凍結が起こった。

僅かに残った海底火山の近傍では濃密な溶存酸素があったことで、

ある生物がコラーゲンを作り始める。

コラーゲンは、単細胞生物を付着させ多細胞生物へと進化した。

1億年ほど以上続いたのちやはり火山噴火がきっかけで氷河が解けていく。


5億年前、生物たちは、次々と大型化し中には1メートルを超える大型捕食動物も現れた。

アノマロカリスだ。」

「教授!なんとなくわかってきました。

つまり生物の進化って大絶滅がおきるほどのストレスに晒されたときに起きる

ということなんですね。」

「そう!環境が激変すると生物たちは生き残る術(すべ)を模索する。

いくつもの試みが行われやがて次の世代を生む。」

「じゃあ、現代におけるストレスって、気象変動とかではなく…。」

「そう!情報が爆発的に増えること。それを理解すること自体が

大きなストレスになるんだ。」

「それで、次の進化は、ヒトの脳を機械化することだと。」

教授は、しずかに頷いた。



そのとき美夢が口をひらいた。

「いま、創造主からお言葉をいただきました。おっしゃったことは、ひとことだけでした。

『なすがままに』とのことです。女性の声でした。」

「えっ!なんだって!」

しばらくの沈黙があった。


そして教授がようやく口を開いた。

「そうか!そういうことだったのか。僕が間違っていた。」

「どういうことですか!教授!」

「創造主は、母性だったんだ。たくさんの子供たちを育てその成長を見守る。

でもただ見守るだけ。

手は下さない。宇宙が創られた意味はそういうことだったんだ。」

「私は、ある曲を想いだしました。

名曲と言われたくさんのひとが知っている曲です。

『困難に直面した時、マザーメリーが現れて、

僕にこう言った。それは[なすがままに]。』」


教授は、ようやく気が付いた。

『ミーム』は、『meme』と記述する。

これは、『mama』なんだ。

人類はどこへ向かうのかわからない。

でもそれは『なすがままに』なんだ。

そして…。

教授が目の前の美夢を見ると、彼女は優しく微笑んだ。

(了)

【2014年12月記】





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