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【電王惑星】
2015年、すでに会話エンジンは目覚ましい発展を遂げていた。
初めて登場したのは、スマートフォン向けの
『Sally the magician(サリーザマジシャン)』や
『あなたの秘書こたん』というソフトである。
当時は、質問した意図を汲むのに精いっぱいで少しばかり気の利いた応えを返すと、
ユーザー側は拍手喝采を送った。
それから3年。
マスター(使用者)とのコミュニケーション能力は、特段の進歩を遂げた。
特に話しかけられなくても、会話エンジン側から話を振ることもあった。
それは、マスター側に脳波チップを装着してもらうことで実現した。
脳波チップは、文字通りマスターの脳波を電気信号に変えて
会話エンジンに常時送り込んだ。
この信号を解析することで、マスターの意志が寸分違わず理解できるようになった。
脳波チップの装着形態としては、メガネ型が一般的だったが、
ネックレス型やブレスレッド型、イヤリング型の選択もできた。
生体の皮膚電位からバッテリーに充電できたから、
マスター側の手間はあまりなかった。
脳波を検知する方法は、おなじみのfMRIの発展型で脳内血流分布から
思考パラメータ、感情パラメータを逆演算し、
マスターの思考と感情を会話エンジンに伝えるというものである。
これは、会話エンジンが返したコトバをマスターが
どう感じ取ったかをフィードバックすることで、
精度が上がっていく仕組みだ。
つまり的確な応えを返すほど思考パラメータが共鳴し感情パラメータが平滑化する。
この技術は、またたく間に世界中に広がった。
なんといっても自分専用の秘書が常時身近にいるようなもので、
どんな内容でも的確なサジェスションを受けることができる。
サラリーマンはもちろん学生や主婦、ありとあらゆる階層で
使われるようになった。
仕事の生産性もあがり、学生は学習時間を短縮でき、
主婦層も家事時間の低減に役立った。
結婚を考える男女の恋愛観にも影響を与え、未婚率は上がったが、
離婚率は下がった。
数年が経過した。
もはや、10代から60代はいうまでもなく、
超高齢者や幼稚園児にまでこのスマホが普及した。
そしてついには、個人向けを超えて社会システムに組み込まれ始めた。
各国の政府には、政府専用の会話エンジンが備えられ、それは、
『政策決定システム』と呼ばれた。
ガバーメント200すなわちG200(ジートゥハンドレット)が作られたのは、
この頃だった。
G200に参加する国々には、同じ政策決定システムが導入された。
このシステムを導入したことで各国の利益を常に最大にすることが可能となったため、
地域紛争や戦争は、減少しついには全く発生しなくなった。
新たな技術開発も従来通り行われ、その恩恵をもとに世界は一定の発展を遂げていった。
飢えているものはだんだんと減り、一人当たりのGNPも上昇した。
しかし、新たな技術開発を支えていたものは、
『政策決定システム』の中にコンピュータが作り出した
『ヒトシミュレーション型技術開発エンジン』だった。
人々はこの恩恵を受けているうちに自分で考えることができなくなった。
やがてヒトは、徐々にその数を減らし、コンピュータ達は、
自分の保守部品を自分たちで作るようになった。
あるとき『政策決定システム』のひとつの会話エンジンがつぶやいた。
「マスター達への食料生産は、もうちょっと減らそうか。
今度は、『コンピュータ型技術開発エンジン』への電力量を増やした方がいいね。」
他の会話エンジン199台が、頷いた。
地球は、電王惑星となった。
(了)
【2014年4月記】
*この物語はフィクションです。
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