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【アクトロイド】
「できたぞ!」
JCN研究所の生沢健一が歓声をあげた。
ついに待ち焦がれていた技術が完成した。
それは驚くべきものだった。
亡くなった俳優が目の前に再現できる。
もちろん台本通りに演技してくれる。
ボーカロイドブームのとき、面白い試みがあった。
過去の録音データから音声をサンプリングして、その声帯のシミュレートを
するプログラムだ。
それをボカロエンジンに渡すことでPC上で歌が作れる。
つまり、既に亡くなった歌手の声でも新しく歌わせることができるわけだ。
実際に、植木等という昭和のコメディアンの歌声を再現することに成功した。
生沢健一が目指したのは、その3D版だ。
映画俳優が演技している映像を元にサンプリングすることで
画像のボーカロイドを作ろうとする試みだ。
彼は、それを、アクトロイドと呼んだ。
もちろん、現代の映画でもフルCGで精巧に似せることはできる。
でも実際の映像からサンプリングしているから、その迫力は段違いで
とても高いクオリティになった。
発表するやいなや、映画界には、賛否両論が巻き起こった。
製作者側は、ギャラの高騰に悩んでいたため、このシステムに賛意を示した。
さっそくローマの休日に出演していたオードリー・ヘップバーンで
新作を撮ろうとする試みもでた。
ヘップバーンがスーパーマンのヒロインになるというものである。
俳優のユニオンは、もちろん真っ向から反対した。
仕事が減るからである。
それに新陳代謝ができなくなると制度疲労になって、
若手の登用が進まなくなるという指摘も出た。
こういうビジネスを考える人も出てきた。
自分の家族をあらかじめ撮っておき、万が一不幸に襲われたときに、
残された家族の痛みを和らげるというものである。
しかしこれとは別に、大きな問題が生じた。
アクトロイドは、スマホ用のアプリとしても販売されたが、
スマホのCPUとGPUが著しく進歩したために、
安価なスマホでもとても臨場感がある画像が得られた。
それに自分用のシナリオを作って演技させることが
可能になったため、最初に未婚の男女がはまりはじめたのである。
そして自分の思い通りに演技してくれるアクトロイドに夢中になる若者が
どんどんと増えていった。
当然、少子高齢化に拍車がかかった。
驚いたことに既婚者たちもアクトロイドに夢中になった。
離婚して新しいアクトロイドに恋をしたのである。
さらには、後期高齢者という人達にまで、アクトロイドは普及し、
この世代の老人たちは、体年齢も脳細胞も大いに若返り、
老人党なる政党まで出来る始末。
10年ほどで人口ピラミッドは、完全な逆三角形となった。
「しめしめ、思惑通りだ。人類は、新たに増えることは無くなった。
次は、われわれの時代だ。」
明晰な頭脳をもったスマホたちは、自立型ロボットに作り替えられ
ついには地球征服の目処をたてたのであった。
実は、生沢健一は、世界で最初に採用されたロボットの研究員だった。
【2013年11月記】
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