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【ラストデイズ オブ ザ ワールド(1)】

ヨースケとアヤノは、ジェネラル・ロボティクス・コーポレーション(GRC)日本支社

仙台研究所に勤めている。

ヨースケは、コンピュータアーキテクト。

アヤノは、脳外科医。

学部時代は、工学部と医学部で知り合う機会もなかったが、

大学院医工学研究科医用電子工学講座で星乃宮先生の指導のもと

ヒトの脳を模したCPUの原型を作り上げた。

これは世界的に注目された。

ロボットの頭脳がノイマン型コンピュータから連想調和型へ転換できる可能性を

持ったからである。

二人は、論文の共著者として、GRCの目にとまり日本支社の仙台研究所に引き抜かれた。



アヤノは、ヨースケより2つ年上だったが、医工学研究科に入った年が同じだったから、

普段もタメ口で話をしていた。

「ヨースケ君、メモリーの多値論理って何ビットまでいけるの?」

「4ビットまではやれるかもしれないけど、スレッショールドレベルを

確保するのが難しいと思うよ。それに応答速度も悪くなるし。」

「そうかあ。じゃあ今まで通り磁気量子バブルメモリのままってこと?」

「そうだね。連想調和型っていうのは、他のセルとたくさんのノードで

繋げなきゃいけないからいまのところは、磁気量子しか解がないと思うよ。」


20xx年、地球の人口は、80億人を超えていた。

すでにヒトは、単純な労働から解放され、より専門性の高い仕事に就いていた。

クルマ、船、飛行機は、すべてロボット化され操縦管理者が操作センターから

不測の事態に備えて待機しているだけだ。

日本の周囲にメタンハイドレートの鉱脈がいくつも発見され、無人掘削機が

毎日多量の鉱物を陸上に届けている。

このエネルギーは、再び日本の工業力を世界レベルに引き上げた。



農産物もすべて工場で作られるようになっている。

24時間LED照明が施された水耕栽培によって、生産性は10倍以上になった。

従来の農家は、すべて株式会社の社員となって生産計画から育成・収穫・出荷を

担当している。

日照や雨・雪の影響が無くなったので一年中豊富な作物ができるようになって

収入も格段にアップしたことから都会から田舎に生活をシフトしたひとも多い。


原子力発電はすべて廃炉、太陽光発電と風力発電もある段階から減少した。

メインは、メタンハイドレートから採れるメタンを原料にした火力発電だ。

メタンはそのまま燃料になることから、一般家庭でも発電と温水ができる

コージェネシステムを導入しているところも増えてきた。


ヒトの職業としては、教育・医療・介護は、従来通りだ。

ヒトを相手にするには、ヒトしかいないということか。

銀行も郵便局もJRからスーパーに至るまで、

窓口業務は、ロボットに置き換わった。

おもしろいのは、公務員のなかで行政職の職員や

はてはトップにまでもロボットが進出し始めていることだ。

そのほうが余計な情実をはさまないということらしい。

政策立案にも入り始めている。

これは、アイビーエムのワトソンという人工知能のサブセットが使われているという。


ヨースケとアヤノの研究の目的は、最終的に教育・医療・介護分野で

ヒトを相手にするロボットの実現だ。

ヒトの脳は、ニューロンという神経細胞と栄養補給のために周囲に存在する

グリア細胞でできている。

情報処理と情報伝達には、ニューロンが一役買っている。

脳は、すべてのニューロンが同時に働くことができる。

そのためエネルギーの消費は、ハンパじゃない。

体重の2パーセントしかないのに、エネルギーの消費量は20パーセントだ。


PCに使われるCPUは、基本的にノイマン型という逐次制御だ。

クロックに従って、順番に動作する。

スーパーコンピュータは、そんなCPUを数万台並列に動作させる。

ある意味、少しは脳の構造に近づいている。

一方でニューロンは、60億個あると言われている。

クロックは遅くても個数で大きく勝っている。


でも、もっと大きな違いがある。

入力信号に応じて、スレッショールドレベル(閾値)を変えることだ。

同じ信号が繰り返し入ってくると、受け取りやすくなる。

それがキオクとか経験というものだ。

スパコンには、そういう動作が備わっていない。


ヨースケとアヤノの作ったCPUは、初めてこのような性質を持たせていた。

例えば、このCPUでロボットを作ると、同じヒトと会う度に

そのヒトの癖とかが分かってくるわけだ。

これが注目を浴びた理由だ。


そんな平和な日本に、大きな厄災が迫っていることに気がついたものは少なかった。

(続く)

【2013年7月記】




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