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【深紅の条環 現代編 第8回 エレクトリックフェイズ 】

円盤の側面のドアがスライドした。

現れたのは、3人のヒト型生物だ。

彼らもスーツを着ている。

おそらく地球人に合わせたのだろう。


お互いにゆっくりと歩み寄った。

世界中が見ている。

握手を交わした。


予想していたことだが、彼らは英語で挨拶をした。

おそらく自動翻訳機を用意しているのだろう。

地球のことは、充分に調べているようだ。

「はじめまして、私たちはニノイの使いのもので、ソラといいます。」

「地球へようこそ!私は、国連事務総長のファンギムです。」

「私たちと国交を結んでいただきたくやってまいりました。」

「唐突なお話なので驚いています。

まずは、お互いのことをよく知ることが大事かと。」

「おっしゃるとおりです。それでは、説明しますので

中継しているカメラの一台で私の顔をアップにしてください。」


それは、驚くべき技術だった。

ソラという使いが手をさっと振ると、

ニノイという星の紹介が視聴している全世界のひとびとに

瞬時に伝わったのである。

いったいどういうことが起きたのか。

原理はわからないが脳内に直接働きかける方法があるようだ。


その内容はこうである。

惑星ニノイは地球型惑星でその恒星系では、第4惑星である。

数10億年の歳月を経て、バクテリア状の原始生物から

徐々に高等動物に進化してきた。

そして7万年前に知的生命が現れ文明が勃興した。

やがて近隣の惑星にすむ住民たちと交易を始めるようになった。

ここで有用だったのは、ニノイの人々は、不定形生物だったということだ。

訪問する星々の住民たちの姿カタチそっくりに擬態することができた。

これは、細胞間の電気的な結びつきを変化させることで実現している。

電気的な相変化というそうだ。


彼らは、平和に文明を発展させてきたが、あるとき大きな脅威に見舞われた。

それがDM(ディーエム)だ。

DMは、あるときに宇宙空間の辺境の地に隔離されていたが、

パルサーの地軸方向に発射されるビームに同期して

濃淡のうずができたときに自己複製と拡大思考という生物固有の性質が備わった。

つまりは、一番原始的な生物となった。


やがて徐々に知能を持ち始めたDMは、周囲の星を侵食しはじめ

領域を拡大していった。


そして1年ほど前から、DMとニノイは、お互いに対峙し

まもなく戦争状態になる可能性が高いとのことだった。

そこで、ニノイは、同盟国を各地において共同でDMを食い止めべく、

各地に使者を派遣している。


事務総長がソラに話しかけた。

「だいたいの事情はわかりました。いくつか質問があります。」

「なんでしょうか?」

「同盟に加わったときと加わらなかったときのメリットとリスクは

どうでしょうか?」

「同盟国に加わった場合は、地球単独で戦う必要はありません。

ただし地球からも一定の戦力を出していただく。

加わらない場合は、DMの攻撃があるまで平和に暮らせるかもしれません。

いったん事がはじまると大きな犠牲をはらうことになります。」

「わかりました。それでは、一定の戦力とはなんでしょう?」

「エクストラ・センソリー・パーセプションをお持ちの方です。」

「よく言われていることがわかりませんが?」

「ESP、つまりは超能力者のことです。」


事務総長は、一瞬コトバを失った。

まったく予想外の話だ。

それでも気を取り直して、

「われわれの星にそういう能力をもったヒトがいることは、

科学的に証明できていません。

証明できていないものを探せる訳がないです。」

「それがいるのですよ。ある微弱な波動を感知したのです。」

「電波ということですか?」

「いいえ、時空間そのものを歪ませる波です。」

「時空間の歪み?」

「そうです。その能力を発揮すると、時間的な移動と空間的な移動、

そして、期待された未来を実現する能力を持つのです。」


幸田コウとさつき、そして春原決(すのはらきめる)の3人は、顔を見合わせた。

なにか、胸騒ぎのようなものを覚えたからである。

そしてそれは、現実のものとなった。


関連曲:Electric Phase by UFO (1977)

(続く)

【2013年1月記】




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