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【麒麟康介の取材簿 シックスセンス フラット1】
「お疲れさまでした。」
「いやー、まいったね。あれからまた横浜まで呼び出されたからね。」
昨晩、小田島先生が行方不明との電話を受けてから、急遽、横浜警察署に呼び出された。
なにしろ、最後に接触した外部の人間が、僕と長谷いずみの二人だったからだ。
根掘り葉掘り聞かれたけど、特に不審な点はないということで帰宅できた。
それにしても、先生はどこへ行ったのか。
インタビューを終えて3階の居室に戻る間に忽然と消えたらしい
拉致・誘拐の可能性もあるとのことだ。
あの技術は、各国の機関がねらっている可能性もある。
心配だけど警察にまかせるしかないだろう。
「いずみちゃん、ゲラはできたかな?」
「ええ、校正かけましたからチェックお願いします。」
「とはいえ、小田島先生がいないと校了できないからね。困ったな。」
「納品は、来週末ですからそれまでに先生がみつかるといいですね。」
サイエンスライター稼業も5年近く続けてきたが、
ここ数年の出版不況の影響で原稿料は下がる一方だ。
でももうひとつの仕事で事務所の維持はできている。
それが国際特許の日本語化と要約だ。
以前に、半導体関係の研究所に在籍していたからそのあたりの技術は
よく理解している。
いくつかの特許事務所と連携して係争になりそうな特許の調査を
行っているわけだ。
最近では、ライターとしての原稿料よりも実入りがいい。
とはいえ、小田島先生のインタビュー記事が使えなくなった場合を考えて、
バックアッププランを考えておかなければ。
「いずみちゃん、シックスセンス研究所の生方(うぶかた)さんの
アポ取れたかな?」
「ええ、明後日、水曜日の14:00です。」
「生方さんのインタビュー記事で穴埋めするか。」
「じゃあ、アウトプレイス社の編集にその旨を連絡しておきます。」
シックスセンス研究所は、ベンチャー企業だけどその技術力は、
世界的に有名だ。
創業者の神部社長とその右腕の生方研究部長は、まだ20代後半の
新進気鋭だ。
彼らが2年前、東京東方大の博士課程で発表した論文は、
世界の研究者の度肝を抜いた。
世界で初めて、テレパシーの存在を明らかにし、
しかもそれを利用して気を感じるセンサーを開発した。
視覚でも聴覚でもなくいわゆる第6感が初めて科学的に明らかに
なったのである。
だれにでもその能力があるそうだ。
自分でも祖父が亡くなる前に夢枕に立ったのを覚えている。
いずれ遠距離通信に使うことができるかもしれない。
「場所は、どこだっけ?」
「東急大井町線の尾山台ってとこです。」
「ルート見といて!」
「ええ、木更津から川崎まで高速バス。そこからJRで大井町まで、
大井町から尾山台駅まで東急です。2時間弱ですね。」
少し原論文を読んでおこうか。
有名なサイエンス・レター誌に載ったものだ。
タイトルは、”The Sign of Six Sense and Potentialities”
日本語だと”第6感の兆候とその利用可能性について”ってとこだろうか。
概要(abstruct)には、こうあった。
”我々は、世界で初めて第6感と呼ばれる信号の兆候を観測した。
右脳と左脳の電気的結合性とその相互作用による電磁波が
ある条件で共鳴し j×B ⇒ 方向に
単一波(ソリトン)Fを放出することがわかった”
脳の模式図を見たことがあるだろうか。
右脳と左脳は脳梁(のうりょう)という神経線維でつながっている。
でもつながっているのは下部のほうだけで、
上部のほうには、実は隙間がある。
この隙間は、ほぼ平行な面で対向している。
この平行な面の間で電気的な結合が行われているというのが
この論文で主張されていることだ。
この電気的結合がある種の共鳴を起こしたときに、
外部に単一波を放つとしている。
j×B とは、j(電流)とB(磁場)に互いに垂直な方向という意味だ。
つまり、電流が右脳と左脳の間に流れ、磁場が足のつま先から
アタマの方向にできたとき
額のあたりからこの単一波が前方に向かって放たれるというわけだ。
ある条件で共鳴するというところは、詳細がわからないが、
訓練によっても強度が増すということか。
そう、これは気巧術の原理でもあるんだな。
”気”がつく言葉はとても多い。
”気が重い”、”気が利く”、”気が滅入る”
”気を許す”、”気づく”、”気が高ぶる”
そうか! すべてこの理屈で説明できる可能性がある。
要は、右脳と左脳のコミュニケーションの状態を示してるんだ。
”気が重い”のは、コミュニケーションがうまくいってないとき。
”気が利く”のは、お互い仲良くやってるとき。
”気が滅入る”のは、お互い同士が引いてしまっているとき。
あとのコトバもこんな感じで説明できるんだろう。
俄然、インタビューが楽しみになってきた。
とそのとき、飛び込んできたニュースがあった。
それは、とても驚くべきことだった!
(続く)
【2012年5月記】
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