「もう、ボクじゃキミには力不足だと思って……」
ゴジラちゃん、心の中を脂汗がタラタラと流れ落ちる。仕事辞めちゃったし、家賃どうしよっ! く~、参った、しかしだ、目の前でメンチョまで作って、やめたいという相手に何も言えないではないか! よっぽどのことなのだから。
「そう……わかった。いいよ」
「えっ? いいの!?」
「うん」
「なんで?」
「はい?」
「だってボクがいなくなったら、キミ大変じゃない?」
「そりゃ、そうよ。仕事も辞めちゃったし……、あんな家賃払えるわけないし……、でも、あなた、それ分かってて言ってるんでしょ?」
「……」
「じゃあ、しょうがないじゃないの」
「で、でも……」
「もういいから、もういい。もう終わり! 私がバカだったんだから」
「でも……、ボクがいないと……」
「ヤゴさん、もういいから。ホントだよ。今までありがとう。ヤゴっちも頑張ってね!」
「ゴジラちゃん……、キミは……キミは……、
なんていい人なんだ!」
「……」
「キミみたいないい人、いないよ!」
「はん?」
「悪かった、今の話はなかったことにしてくれ! ボクが間違ってた!」
「なんじゃ?」
「今まで通り、書き続けてくれ!」
「はん?」
「頼む!」
「だって、もう無理なんでしょ?」
「いや、大丈夫なんだ」
「へっ?」
「とにかく、書き続けてくれ!」
ヤゴは、メンチョ持参のまま、風の又三郎の如く、ヒュルル~ンと去っていった。ゴジラちゃん、クエッションマーク持参で帰宅する。また、パソコンと睨み合う日々つづく。
〈今日の報告事項〉
「被害者2000万の会」 からのメール炸裂する……、が、最後のメールから50分後、それとはまったく色の違ったメールとどく。以下。
「もしかして、今キミは最悪な事態なのか? 仕事がない、収入がない、家賃が払えない、転居費用がない、誰も助けてくれない、途方に暮れてる、路頭に迷いそう、ペットが足手まとい、低血糖、胃潰瘍、うつ……、
結局、キミを助けられるのは、ボクだけなのではないか?
一度会おうか?」
はい! これ病気の症状です。ゴジラちゃん、分かってました。自分という存在を、自分の中で確立する方法です。初めは相手に自分がいなければ何もできないだろ? という状態をつくり、その後、これでもか、これでもかと相手をどん底に落としこみ、そこで再び自分がいなきゃ、やっぱりダメでしょ? とやる彼のやり方です。それを分かっててやっているのか、無意識なのか、それは本人でないと分からない。
この病気をもつ者の身内の一人は鬱になるとのこと。ヤゴの妻は、恐らくそれだ。さすがのゴジラちゃんさえ、ヤバイ状態ですから、無理もない。
ゴジラちゃん、考える考える……。このまま無視を決め込むか、印ろうをヤゴの目の前にかざし、「オヌシ! それがキミの病気なのでござるよ!」 と首根っこひっつかんで病院に放り込むか……、こうご期待!