歩兵の戦術(Infantry minor tactics、もしくはIndividual Movement Techniques)は、歩兵を戦闘において運用する戦術である。
元来戦術という概念は一個の戦闘を指導し、部隊を運用する技術を指すのであり、個々の歩兵の機動や射撃についての行動を指導するものではない。
ゆえに英語では個人運動技術(Individual Movement Techniques, IMTs)と呼ばれる場合がより多い。
ただし、ここでは一般的な戦術における下位概念の戦術という意味として、歩兵戦術という言葉を用いる。
歩兵とは個人が小銃などで武装し、主に徒歩で作戦行動を行う陸軍の兵科の一種である。
陸上戦闘において歩兵は、戦車や砲兵が活躍している現代戦においても重要な役割を担っており、また自動車化部隊や空挺部隊などの発展も見せている。
歩兵は銃の射程内において敵と交戦し、また閉鎖的な特殊地形での近接戦闘、また肉迫した白兵戦でも柔軟に運用することが出来る。
特に森林・市街地・山岳・建築物室内などの特殊地形における戦闘では徒歩行軍が主な移動手段となるために歩兵部隊がなくては作戦行動が成立しない。
陣地防御などの防御行動を行う状況を除き、歩兵戦術の中核となっているのは「射撃と運動(ファイア・アンド・ムーブメントfire and movement)」という原理である。
射撃と運動とは射撃と運動を相互かつ交互に連携させることによって機動的に運用する教義である。
歩兵部隊の射撃と運動は基本交戦単位となる分隊を「射撃班」と「機動班」に分割して行う。
まず射撃班が敵の行動を妨げるための制圧射撃を行い、機動チームはその隙に迂回・包囲し敵の側面・後衛に突撃・火力攻撃を加え殲滅する、というものである。
現代の陸軍のほとんどはこの思想を受け入れており、部隊の編成・装備・訓練もこれに則っている。