現在、天狼院書店において「ライティング・ゼミ」を受講しておりますが、宿題として提出し、先生から面白い・良かった等と言われたものの、天狼院の考え方や方針の関係でアップされなかった記事を紹介したいと思います。
この記事は、もう少しネタを練り込めば良かったと講評頂いた記事です。掲載は見送られたのですが、内容としてはそう滅多にある事ではないので、ここにアップしたいと思います。天狼院に提出した時には、レギュレーションの関係で名前を出せませんでしたが、ここではそのまま出したいと思います。
タイトル:一流の証明
「うわ、こんなの食べた事ない」
「今まで食べた中で一番美味しい。自分の中の常識が変わる美味しさ」
「この魚、本当はこんな味だったんだ」
料理を食べた人から、思わずそんな言葉が出ていました。そして、僕も同じ感想を持った一人でした。まさに、これまで経験した事のない、次元の違う美味しさでした。それもそのはず、その料理を手がけたのは、福岡のレストラン「THE GARDEN」で料理長兼責任者も務め、世界で認められた三ツ星シェフ「宮田直和」氏だったからです。
宮田氏は、10代の頃から料理の世界に入り腕を磨き、料理コンテストで世界一に輝きました。その後、世界にある名店と呼ばれるお店を渡り歩き、2011年に発生した東日本大震災を機に帰国しました。帰国した詳しい理由は伺っていませんが、日本が震災で大変な状況になっているからこそ、生まれ育った国を自分の出来る事で応援したい、と考えたのかもしれません。帰国してからは、前述した通り福岡のレストラン「THE GARDEN」で働きますが、現在はそこも退社しています。
しかし、普通に考えたら、これだけ凄いシェフの料理を食べられるわけがありません。僕自身、こんな機会に巡り合うとは思っていませんでした。
その縁をつかんだのは、自分を変えたいと思ったからです。自分のファッションセンスに自信がなかったので何とかしたいと思った時、たまたまファッションセミナーの事を知りました。これまでファッションセミナーに参加した事などなく、敷居が高そうなイメージがあったのですが、わらにもすがる思いで参加してみました。
参加してみると、そこにはこれまで自分の知らなかった世界が広がっており、同時に、これまでになかった人の縁も広がっていきました。その後、形成されたグループの中で、いろいろな人が集まる懇親会の案内が回ってくるようになりました。これは、共通の趣味や興味を持った者同士が、そのテーマごとに都度集まる会なのですが、その中に今回のスペシャルディナーがありました。
僕の中でファッションと同じくらい大事なのは、やはり食事だろうという思いがありました。両輪と言っても良いかもしれません。しかし、それ以前に美味しいものを食べた事がなければ話しになりません。どうしようかと思っている時に回ってきたのが今回の案内でした。問題は、いつもよりも高い参加費でした。正直悩みましたが、この値段で三ツ星シェフの料理が食べられるなんて事は、そうそうないだろうと考え直し、参加する事にしました。
場所は海の見える超高層マンションの一室です。それだけですでに別世界です。慣れない手つきでインターホンを押し、入り口を開けてもらったところで中に入りました。しかし、高層階と低層階のエレベーターがわかれている事がわからず、間違えながらも何とか目的の部屋にたどり着きました。完全におのぼりさんです。
中に入ると、すでに料理がテーブルに並べられていました。見慣れた料理から見た事のない料理までさまざまです。開始時間となり、主催者から簡単な挨拶と、宮田氏から料理の説明があると、早速会食が始まりました。
宮田氏の説明の中で、全ての料理において最高の食材と手間をかけている事を聞いていたので、余計にそう感じたのかもしれませんが、体験した事のない美味しさでした。味オンチの僕にでも違いがわかるほどです。日本語は、世界の数ある言語の中でも味覚に関する表現は豊かだ、と聞いた事がありますが、僕の知っている単語では、その良さをきちんと伝えられません。それほどに衝撃を受けました。
全ての料理が出たところで、今回のディナーを実現するために仲介して下さった方と、宮田氏から挨拶がありました。
宮田氏からは、料理に精通しているからこそ言える沢山の言葉を、聞かせて頂きました。
「本当にあらゆる料理を作ってきて、一番難しい素材と思うのはトマトです」
「B級グルメはB級グルメであるべきで、最初から手作りするよりも出来合い品を混ぜた方が、何故か美味しくなります」
「その料理器具がなければ美味しく出来ないというのは、料理人のエゴだと思います」
器具がないと出来ない、という内容については、宮田氏自身のエピソードを教えてくれました。
「公民館で料理を作る事になった時、火がおこせなくて焚き火でやりました」
その時の状況に応じて、最善を尽くすのが本物のプロなんだと思いました。そして、いろいろ伺った中で一番印象に残った言葉は、要約するとこんな感じです。
「世界のお店で修行してきて、料理人としては一人前になったと思います。しかし、人としてはまだまだ若輩者であり、もっと外に出て修なければならないと思っています。そして、最終的にはボランティアで貢献出来たら良いと思っています」
本日出されたメニューを見ると、もしお店で食べたなら、この値段では絶対に食べられないと素人でもわかる内容でした。もしかしたら、調理に関わる部分に関してはボランティアで、食材費、いや、食材費さえも宮田氏が一部負担していたかもしれません。
すでに、夢に向かって歩き出している一流料理人の姿を見た気がします。現在の自分に満足せず、高め続ける事を意識している人だけが到達出来る境地なのかもしれません。最後に、そんな素晴らしい料理を提供してくれたシェフに言いたい事があります。
「ごちそうさまでした」
