ここ二回、鹿島へ釣行して思った事。
前評判通り、鹿島の鯵はサイズのわりに良く引く。抜き揚げ直前に、「そうはいくか!」とばかりに真下へと猛ダッシュを見せる。
納竿後、みんなでお喋りしている時にも話題になり、「ヒレが発達してデッカいんじゃないっすか?」なんていい加減な発言をしたんで、比較してみる事にした。
7/14 鹿島某所で釣れた鯵(上段)と、7/15 勝浦某所で釣れた鯵(下段)。
いずれも釣れたのは朝マズメ。
恐らく遊泳力に最も影響を及ぼすであろう尾鰭。
背鰭。
腹鰭。
胸鰭。
う~ん、特に違いは無いぞ………どこから引きの違いは出てくるんだろう?
続いて、鯵の生息する場所、鹿島の海と、外房の海についてネット等で調べてみた。
[鹿島沖]
沿岸から約30km沖までは水深40m内外の平らな砂質の海底が続き、 先は水深140 mまで沈み込む大陸棚が続く。また太平洋から流れ込む日本海流(黒潮)と三陸沖から流れ込む千島海流(親潮)がぶつかり合う潮目となり、水産資源が豊富である。
[外房沖]
千葉県南部沿岸は北上してくる黒潮の影響を受けて温暖であり、北部の銚子半島は南下する親潮の影響を受ける。
ひとくちに外房と言っても広大なエリアなので、もう少し細分化して調べてみると、
(銚子付近)
温帯性海藻相からなるが、親潮の影響を受けて寒海性海藻も見られる。
(野島崎付近より太東岬)
・このエリアが普段鯵釣りしているエリア
外洋に面し、変化に富んだ海岸線からなる区域。純温帯性海藻相からなる。
(大房岬より野島崎付近)
黒潮の影響を強く受ける区域。温帯性海藻を主とするが、分布上この海域を北限とする亜熱帯性海藻も多い。
ということは、
いつも釣りをしている鴨川や勝浦近辺は、南から北上してくる黒潮の影響を強く受け、それより北の銚子~鹿島近辺は、黒潮だけで無く、北から南下してくる親潮の影響も濃く受けるという事。
では、黒潮と親潮の違いとは………?
[黒潮]
南から流れて来る黒潮(暖流)は、プランクトンが少なく透明度が良い。海中の深いところまで光が差し込み、わずかの光が反射して戻って来る為、暗い色に見える。
[親潮]
高緯度の場所を流れる親潮は、温度の変化が大きいのでプランクトンが良く育つ。この点、年間を通じて温度変化の少ない赤道付近から流れて来る黒潮とは対象的である。
北から降りてくる親潮の方が冷たいが、魚は寒いところにいるものの方が寒さから身を守るために脂を蓄え、脂のりが良く、一般的には“北にいる(寒いところ)にいる魚の方が美味い”とされている(マグロを除く)。
あれれ?何となく「黒潮」の方が魚にとって良いイメージがあったんだけど、これだけ見ると「親潮」も凄くグレイトな海流なのね。
時期的なものもあるんだろうけど、確かに鹿島の鯵の方が脂がのっていた。外房の鯵は、血合いの部分が真っ赤で、いかにも脂が薄い感じがする。横浜の鯵に比べても、それは顕著だと思う。
でもって鹿島近辺は、その2つの海流が交差する場所って事なので……
☆ この海域は北太平洋西部亜寒帯循環の一部である親潮と、北太平洋亜熱帯循環の一部である黒潮の出会う海域である。 ただし、親潮と黒潮が直接ぶつかり合うことは稀である。
親潮の南側の端や黒潮の北側の端には水温が急激に変化する場所があり、これらの間には、混合域と呼ばれている海域が広がっている。 混合域には親潮と黒潮の水が混ざったものだけではなく、親潮から切離してできた周辺より水温の低い冷水渦や、黒潮から切離してできた周辺より水温の高い暖水渦が入り混じって分布している。
冷水渦や暖水渦は混合域内で複雑な動きをしながら、周囲の水と物質や熱のやり取りをして小さくなっていく。 ときには冷水渦が黒潮前線を横切ったり、あるいは暖水渦が親潮前線を横切って親潮の中をさらに北上していくこともある。
えぇっと、ザックリとまとめると…………凄く複雑な海域?って事?
複雑な海流エリアを渡り歩く鹿島の鯵の方が、遊泳力に秀でているという事か?
何だかあまり釈然とした回答では無いので、「鯵」自体についても調べてみた。
・ 「鰺」の文字は「参」が旧暦の3月、太陽暦の5月にあたり。この頃がマアジの旬ということからくる。
・ たんぱく質含有量が20%以上と多く、同じ青背魚のいわしやさばの旨みが脂であるのに対し、あじの旨みはたんぱく質の旨みと言える。栄養的には白身魚に近い。
・ 体色は、背側は鳥類など上方からの捕食者を撹乱するために暗い色、腹側は大型肉食魚のような下方からの捕食者を撹乱するために明るい色になっている。しかし、瀬付きやあまり回遊しない個体には背側も明るい色になっている個体もいる。(外房では背側も色の薄い鯵が良く釣れますね!)
・ 背の青い魚(青魚)ではあるがクセのない白身。(えっ?そうなの?言われてみれば赤身では無いけど、白身っていう認識は無かったなぁ……。)
・ マアジは他魚種との生き残り戦略として、回遊と地付きの両方に対応できる。身肉の色も回遊魚の赤身と、定着魚の白身の中間にあたるピンクをしている。
・ 寿命は最長12年という記録があり、夏の季語。(12年………どんだけのサイズになってるんだろう………?)
・ 日光が射し込む浅場には緑色の海藻が多いうえ、植物プランクトンが発生して海水の緑色が増し、日光の成分の中でも黄緑色の光が透過しやくなる。緑色があふれた環境での保護色として黄色っぽい体を獲得すると推測される。(水深の無い外房に、黄色っぽい鯵が多いのはこの辺が要因か?)
・ 浅海の岩礁域に定着する「居つき型」と、外洋を回遊する「回遊型(沖合回遊群)」で体型や体色が異なる。居つき型は全体的に黄色みが強く、体高が高い。一方、「回遊型」は体色が黒っぽく、前後に細長い体型をしている。(この違いって外房と鹿島の違いを言い当てているかも。鹿島であれだけ鯵を釣っても、外房で見れるような黄色っぽい鯵は一匹も混ざらなかった。)
そして、多分、下記の辺りが結論。
・ 体は著しく側扁し広葉樹の葉のような形状のものが多い。マアジでは同種内で二通りの体型に分かれ、その中間の体型のものも存在する。
まとめると、
[鹿島の鯵]
親潮と黒潮の交差する、複雑な海域を住処とする。水深もあり平坦な海岸線を持つエリアなので、場所に居着くような性質を持たず、遊泳力に秀でたスプリンター型。肉質は、北からやってくる親潮の影響を強く受け、脂が乗っている。
[外房の鯵]
南からやってくる黒潮の影響を強く受け、変化に富んだ海岸線、豊富な根周りや藻場を住処とする。全体的に水深の浅いエリアの為、日光の影響を強く受け、繁殖する藻などの共存関係などからも黄色っぽい体色のものが多い。鹿島に比べると、「あれ?釣られちゃった?エヘ♡」と、ややおっとり型?
もう一度比べて見ると………
上の鹿島の鯵の方が、シャキッとしていかにも泳ぎそうな弾丸野郎に、外房の鯵の方は、ちょっとメタボなオッサン体型、に見えなくもない。
何だか結論らしい結論は今のところ出ないんだけど、色々調べてみているうちに、自分の中にある言葉が思い浮かんだ。
それは、
「鹿島の鯵は、板東武者だ!」
という事。非常に乱暴な片付け方かもしれないが、要するに外房の鯵に負けず劣らず、相手としては不足無しって事。
今回、ネットを中心に色々調べましたが、それぞれの資料の事実関係までは調べて無いので、全体的に俺自身の「たわごと」として受け止めて下さい。
結論めいたものも、かなりふんわりとした着地になってしまったし、検証とするには私感が入り過ぎていると思います。
さて………それはともかく、週末はどっちを狩りに行く?
最期の最後まで抵抗を見せる板東武者か?
おっとりとした表情と、蠱惑的な体色で俺を魅了する黒潮野郎か?
どっちも魅力的だわ♡
あれ?横浜の鯵ってどっちなのよ……………?